武田のアリナミンの語源は豚肉とニンニクにあり
皆様の豚肉のイメージはどんなでしょうか?
健康的という人もいれば、太りやすそうなどイメージは様々かもしれません。
DR大友的には豚肉と言えばビタミンB1です。
ビタミンB1はチアミンとも呼ばれ、水溶性ビタミンに分類される生理活性物質です。
食事から摂る際には、牛肉よりも鶏肉よりも断然にビタミンB1が豊富に含まれています。
ビタミンBが豊富に含まれている食材トップ10にも豚肉が多く含まれています。
豚ヒレ肉 | 0.98 |
生ハム(促成) | 0.92 |
豚もも肉 | 0.90 |
ボンレスハム | 0.90 |
焼豚 | 0.85 |
たらこ(焼) | 0.77 |
うなぎ(かば焼) | 0.75 |
たらこ(生) | 0.71 |
豚ロース肉 | 0.69 |
豚肩ロース肉 | 0.63 |
ビタミンB1はDR大友にとっても馴染み深いビタミンなのです。
というのもDR大友の母校である慈恵医大の学祖でもあり海軍の軍医だった高木兼寛はあるエピソードからビタミンの父と呼ばれています。
高木先生は日露戦争に際して兵隊さんのお食事として白米ではなくビタミンBが多く含まれる麦ごはんを導入し、ビタミンB1が欠乏することで生じる脚気(かっけ)という病気で亡くなる兵隊さんを劇的に減らすことに成功したからです。
日露戦争では25万人もの脚気患者がでて戦傷病死者4万人強のうち病死者が3万人。
そしてその多くが脚気によって亡くなっています。
高木先生は海軍でビタミンB1の欠乏を麦飯にすることで防ぎ、なんと脚気による死亡者はゼロという功績を残したことから麦飯男爵とも呼ばれています。
ちなみに脚気の症状は、疲労感・息切れ・動悸・むくみ・食欲不振・手足のしびれです。
軽症であれば命に関わることはありませんが、重症になると心不全を起こして、急激に全身状態が悪化して死亡してしまいます。
現代でもビタミンB1が不足していることは決して珍しくありません。
ビタミンB1が足りなくなっていると、エネルギーの源であるATPが体内で産生されないために、食欲がわかなくなったり、疲労や倦怠感が増すことになります。
またビタミンB1が不足すると脳や神経の機能にも影響を与えます。
脳は中枢神経、末梢神経を十分にコントロールできなくなり、イライラや不安など精神が不安定になったり、集中力の低下などを招きます。
さて豚肉の話に戻りましょう。
豚肉の調理方法でおすすめなのは、豚シャブではなくてとんかつです。
というのも豚肉に含まれるビタミンB1は水に溶けるタイプのビタミン(水溶性ビタミン)なので、しゃぶしゃぶにしてしまうと水に溶け出してしまうのですね。
その一方でとんかつは水分を使うことがないので、ビタミンBの吸収という観点からは豚シャブよりも優れていると言えます。
一般的に豚シャブではバラ肉が使われることが多いので、よりヘルシーなヒレ肉でとんかつをお楽しみいただければと思います。
糖化ストレスの観点から揚げ物は避けたいという方にオススメなのが豚肉のガーリックステーキ。
ニンニクと一緒に食べると、ニンニクに含まれるアリシンがビタミンB1と結びつきアリチアミンという物質に変化します。
このことによって ビタミンB1分解酵素(チアミナーゼ)から分解されにくくなり、また、ビタミンB1だけよりも吸収率がよくなるといわれています。
ところでアリチアミンって何か聞き覚えがありませんか?
アリチアミンとは武田薬品工業で有名なアリナミンなのです。
アリナミンがコマーシャルで肉体疲労から目、肩、腰の疲れを訴える人に有効というのは、豚肉とニンニクパワーだったということです。
今日も最後までご覧いただき誠にありがとうございました。
他にも豚肉は栄養素がいっぱい。こちらで西洋医学的な観点からも東洋医学的な観点からも豚肉パワーについてご説明しています。
〔大友“ピエール” 博之〕
日本のみならずロサンゼルス、フランクフルト、香港、バンコクに拠点を持ち、個別化医療(precision medicine)を実践している。免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、運動療法を取り入れた治療で定評がある。
・ 医師 日本抗加齢医学会専門医 / 欧州抗加齢医学会専門医 / 日本麻酔科学会専門医
・ 西洋薬膳研究家、シェフドクターピエールとしても活躍中
・ 渋谷セントラルクリニック代表
・ 一般財団法人 日本いたみ財団 教育委員
・ 一般社団法人食の拠点推進機構 評価認証委員/食のプロフェッショナル委員
・ 料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有するシェフなどが集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会のオフィシエ
・ ワインにも造詣が深く、フランスの主要産地から名誉ある騎士号を叙任している。
シャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ / ボルドーワイン騎士団 コマンドリー /ブルゴーニュワイン騎士団 シュヴァリエ