易消化食 いしょうかしょく

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易消化食とは

易消化食とは、消化管の保護を目的として食物繊維や硬い食品などからの物理的な刺激、香辛料や酸味、塩分、糖分、カフェイン、アルコールなどの化学的な刺激、熱い食物やアイスクリームなどの冷たい食物からの温熱的および冷感的な刺激などが少ない食品や調理法を用いて、消化の際に食物の胃内停滞時間が短くなるように、食事の質や量、調理法などに考慮された食事のことをいいます。一般治療食に分類されている「軟食」や「流動食」も、易消化食としての扱いの範囲ではありますが、それよりも更に消化がしやすいように配慮された食事のことをいいます。

易消化食の基本的な考え方

・エネルギーやたんぱく質の不足に気をつけ、体力の増強を図ること。
・刺激物(香辛料、酸味、塩分、糖分の高いものなど)は避ける。
・食物繊維を多く含む食品(きのこ類、海藻類など)は避ける。
・過度に熱い食物や冷たい食物は避ける。
・カフェインやアルコールは避ける。
・揚げ物など脂質を多く含む食品は避ける。

などが挙げられます。

胃・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍は、胃・十二指腸の粘膜に欠損や傷ができた状態で、粘膜の欠損が粘膜下層にまで及んでいるものをいいます。

胃潰瘍のうち80〜90%はヘリコバクター・ピロリ菌への感染による胃炎が原因となっているものが多く、中・高齢者での発症が多くみられます。その他の原因としては、薬物やストレス性のものとされています。十二指腸潰瘍のヘリコバクター・ピロリ菌への感染率は95%以上と更に高くなっており、胃潰瘍と比べて若年者での発症が多くみられます。

ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌は治療の基本となっていますが、潰瘍の治癒において栄養管理は重要です。以前は、消化への負担を考え制限食が推奨されていましたが、厳重な制限食は胃が空っぽになることで胃酸分泌を促し、潰瘍の治癒が遅れてしまうことがあるため、現在では潰瘍からの出血時を除いて、できるだけ早く高エネルギー・高たんぱく質の食事から十分な栄養素を補給し、潰瘍の治癒促進を図るものとされています。

たんぱく質は、体に必要な必須アミノ酸を多く含む食品で、消化の促進を考えて脂肪の含有量が少ない食品を選ぶことが大切です。糖質は、食物繊維を除けば胃酸分泌を促進することは少なく、他の栄養素と比較して胃内の停滞時間が最も短いため、胃・十二指腸潰瘍の栄養管理におけるエネルギー補給という点で適しています。

潰瘍による創傷治癒の観点から亜鉛の付加が必要であり、出血に伴い鉄欠乏性貧血を起こしていることも多いため、鉄分の補給も重要です。 具体的な食品の選択としては、脂の少ない白身魚や鶏肉のささみ、牛乳、卵など胃内の停滞時間が短く消化が良い食品や、チーズなど少量で栄養価が高い食品を取り入れ、アルコールやコーヒー、炭酸飲料、香辛料、酸味の強い食品、高脂肪食品など胃の運動や胃酸の分泌を促進する食品は避けます。

また、早食いを避け、よく噛んでゆっくり食べることや食事のリズムを規則正しくすることなども大切です。

クローン病

クローン病は、原因不明の慢性炎症性腸疾患の1つで、大腸および小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍を引き起こします。

腹痛や水様下痢、発熱、体重減少などが症状であり、10〜20代の若年者に多く発症します。男女比は、約2:1の割合で男性に多くみられます。先進国に多く、北米やヨーロッパでの発症率が高くなっています。わが国でも患者数は毎年500〜1000人近く増加しており、今後も発症患者の増加が懸念されている疾患です。

腸管や腸管外に多彩な合併症を引き起こし、再燃緩解を繰り返す難治性の疾患です。薬物療法や外科的療法の他に、栄養療法により栄養状態を維持し、炎症の再燃・再発を予防することが大切です。

クローン病では、腹痛や下痢による食欲不振や炎症のある消化管からの栄養素の漏出、発熱などによる消費エネルギーの増加などにより、たんぱく質やエネルギーなどの栄養障害が多くみられます。急性期には経腸栄養法による栄養管理が行われますが、症状が安定してくれば経腸栄養法と併せて消化の負担にならないよう低脂肪・低残渣・低刺激食を基本とした食事療法を行います。

具体的には、必要エネルギーの60%以上を炭水化物から摂り(腸の運動を活発化する不溶性食物繊維は控えめに)、たんぱく質は肉類より炎症を抑制する脂肪酸を含む魚類からの摂取の割合を多くし、腸内環境の改善のために乳酸菌飲料やヨーグルトなどを摂取する、刺激物(香辛料、カフェイン、過度に熱い食物や冷たい食物)を避ける、調理法も煮込み・蒸し・すり潰しなどを用い消化の負担にならないようにする、慢性的な炎症からの腸管吸収能低下による栄養障害や、脂質制限などによる脂溶性ビタミン(ビタミンD・K)が欠乏しやすいため気を付けることなどが必要です。

 

【監修】 大友博之 渋谷セントラルクリニック エグゼクティブ ディレクター

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