脂質コントロール食 ししつこんとろーるしょく

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脂質コントロール食とは

脂質コントロール食とは脂質の摂取量を調整した食事のことをいい、脂質を含む量が1日あたり20〜30gの低脂質食と、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の比率(P/S比)を上げるために不飽和脂肪酸の摂取量を増大させた、高脂肪食の2つに分けられます。肝炎、膵炎、胆嚢炎、胆石症などの急性憎悪期から回復期へ移行する過程では、脂質の摂取量を1日あたり20g程度に制限した低脂質食を摂取します。各々の疾病の急性憎悪期には、食欲不振や消化不良などの症状を引き起こしやすいため、消化の負担を軽減した流動食や軟食が利用されることが多いです。回復期になると、脂質の摂取量を1日あたり30g程度に増量することができるようになります。高脂肪食は、血清コレステロール値を低下させるため、飽和脂肪酸の量を減少させ、不飽和脂肪酸の量を増大させた食事です。併せて、コレステロールや中性脂肪の体内での合成を抑制するために、摂取エネルギー量やコレステロール自体の摂取量を1日あたり300mg以下に制限をします。また、血清コレステロール値の低下を図る必要がある疾患への対応としては、果物に含まれるペクチンや海藻に多いアルギン酸、こんにゃく粉に多いコンニャクマンナンなどの摂取が有効とされており、脂質コントロール食と併せて取り入れられています。

適応疾患

肝炎

急性肝炎や慢性肝炎の憎悪期においては、全身倦怠感や食欲不振、吐き気、膨満感などの消化器症状や、黄疸などの発症がみられることがあるため、症状が現れた際には脂質の摂取量を1日あたり20〜30g程度に制限した、低脂質食を摂取します。

膵炎(急性・慢性)

急性膵炎は、暴飲暴食、アルコールの過剰摂取、胆石症によるものもありますが、原因不明で発症することも多くあります。上腹部に疝痛(せんつう)と呼ばれる激しい腹痛が起こり、次いで吐き気などがみられます。発症時には絶飲食とし輸液による栄養管理が必要とされますが、回復期になると徐々に経口摂取に移行していきます。常食へ移行しても脂質の摂取量は制限する必要があり、1日あたりの脂質の摂取量を10〜20gに制限した、低脂質食を摂取します。慢性肝炎は、原因の6割をアルコールの過剰摂取が占めており、次いで多いのが胆道系疾患によるものですが、原因不明のものも多くみられます。急性期の症状が再燃した際には急性膵炎に準じた食事としますが、腹痛や炎症が少なくなれば脂質の制限を緩和し、1日あたりの脂質の摂取量を20〜30gに制限した、低脂質食を摂取します。

胆嚢炎

胆嚢炎は、胆嚢の細菌感染や胆石によって胆嚢管に閉塞が生じることで発症します。疼痛(とうつう)や黄疸がみられることもあり、食事の摂取によって疼痛は増強します。抗生物質などの薬物療法が行われますが、栄養管理では急性期は絶飲食とし静脈栄養法が用いられます。急性期の症状が治まれば流動食から常食へと徐々に移行し、軟食では脂質の摂取量を1日あたり20g程度に制限し、常食へ移行しても30g程度の低脂質食を摂取します。

胆石症

胆石症は、胆汁中で溶解できなくなったコレステロールやビリルビンが、体内で胆石となることによって発症します。コレステロール胆石の発症が多くみられますが、他にビリルビンカルシウム胆石や黒色石などもあります。上腹部や右季肋部に強い疼痛(とうつう)が生じることが特徴で、胆石発作と呼ばれています。発熱や黄疸を伴うこともあります。食事療法では胆石発作や胆石の形成を予防することが目標とされ、最も胆嚢の収縮を促す刺激となる脂質を制限し、コレステロール胆石の形成を予防するためコレステロールの摂取量の制限なども行われます。急性期を除けば極端な脂質の制限は必要なく、1日あたりの脂質の摂取量を20〜30gに制限した、低脂質食を摂取します。

脂質異常症(Ⅱa型・Ⅱb型)

Ⅱa型脂質異常症では、血液中のLDLコレステロールが増加し高コレステロール血症が生じます。血清コレステロール値の上昇は動脈硬化を引き起こし、虚血性心疾患や脳血管疾患の原因となります。栄養管理としては摂取エネルギーの制限の他に、血清コレステロール値の低下を図るため飽和脂肪酸の摂取量を制限し、不飽和脂肪酸の摂取量を増大させた高脂肪食を摂取します。また、コレステロール自体の摂取量も制限します。Ⅱb型脂質異常症は、血液中のLDLコレステロールに加えてVLDLコレステロールも増加し、高コレステロール血症および高中性脂肪血症を生じます。栄養管理としては、Ⅱa型と同様の食事内容に加えて砂糖や果糖などの糖質や、アルコールの摂取量を制限します。

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