④ クローン病の治療はお薬を使いながらの断食が基本

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【Dr.大友とDr.菰池の対談動画はこちらをclick】

Dr.大友 (渋谷セントラルクリニック エグゼクティブ ディレクター)
クローン病の治療についてお伺いしたいと思います。
クローン病には寛解期という症状が少し落ち着いている時期と活動期といわれる体の中で炎症がたくさんある時期があるというお話でしたが、こうした時期によって治療法も違うんでしょうか?

Dr.菰池(たまちホームクリニック院長) 
そうですね。
一般的に炎症がどれくらい激しいのかにもよります。炎症が激しい時は入院して、点滴をしながら腸を休めることが必要になることもあります。

Dr.大友
病院内断食ですね。

Dr.菰池 
一番ひどいケースですね。

Dr.大友
それが一番よく治ったりしますからね。

Dr.菰池 
クローン病が本当にひどいケースでは確かにその方が早く治ります。

Dr.大友
そこまで病状、つまり炎症がひどくない場合はどうですか?

Dr.菰池 
そこまでひどくなっていない場合は食物残渣を起こしやすい物、簡単にいうと大便が作られやすいような食事は
避けていただく方が良いと思います。
腸の中に便が通ってしまうと炎症を治す力が弱まってしまうので、腸が動かないようにすることは治療の大原則となりますね。

Dr.大友  
食物残渣(しょくもつざんさ:残りかす)がでるような食べ物というと、例えば溶けにくい食物繊維とか、タンパク質とか。

Dr.菰池 
炭水化物の中にもそのようなお食事もありますね。

Dr.大友  
そういった食物残渣がでやすい全般的には食べないようにするということは、カロリーは別の形で補給する必要があるということですね。

Dr.菰池 
その方法の一つが点滴になります。ただ点滴は何時間もかけてやらないといけないし、毎日毎日病院に通うのも現実的ではありません。
そのため、私たちが医者になる頃までは鼻からチューブを入れて胃の中までチューブを通して栄養剤をポタポタ入れていくことがクローン病の治療の主流でした。

Dr.大友  
いわゆる経管栄養ですね。

Dr.菰池 
鼻からチューブを入れていた理由には
味が不味くてとても口からは飲めないということがありました。最近の経腸栄養剤はそういった面が非常に改善されてきました。私も新しい商品が出ると試飲をしますが結構飲みやすいんですね。

Dr.大友
どんな味なんですか?

Dr.菰池 
各メーカーさん工夫されていて、ヨーグルト味だったり、コーヒー味だったり、パイナップル味、イチゴ味などちょっと独特な甘みがあったりするんですが、私個人はお腹が空いていればすごく美味しく飲めるんですよね。

Dr.大友  
なるほど。

Dr.菰池 
クローン病では経腸栄養剤をご飯を食べる代わりにお薬としてお出しすることもあります。
多くの場合、一日1回から3回ぐらいお食事を置き換えて経腸栄養剤を摂って頂きます。
一日1回なのか3回なのかは病院のほうで考えて指示は出させて頂いています。

Dr.大友  
僕は甘ったるいのが苦手なので温度を冷たくしたいんですけど、冷やしたらだめですか?

Dr.菰池 
良いと思います。そういうお声も非常に頂きます。ただ製品の特性もあって冷やすことを推奨しないというメーカーさんもあるんですけど。
私としては
どういう飲み方をするかは患者さんの自由だと思っています。

Dr.大友  
冷やすといっても凍らせない程度、冷蔵庫ぐらいの温度なら大丈夫ですか?

Dr.菰池 
はい、大丈夫だと思います。

Dr.大友  
甘いのは冷やすと感じにくくなりますからね。

Dr.菰池 
はい。

Dr.大友  
こうした治療に反応しなかった場合はお薬の出番ということですか?

Dr.菰池 
一般的には両方同時並行で出すことが多いんですけども、お薬の出番ですよね。

Dr.大友  
例えばどんなお薬をお使いになっているのですか?

Dr.菰池 
潰瘍性大腸炎の時と同じで5-ASA剤と言いまして、クローン病の場合はペンタサかサラゾピリンが多く使われています。

Dr.大友  
5-ASA、つまり5-アミノサリチル酸製剤ですね。

Dr.菰池 
あとは免疫を抑えるお薬で最初に出すのはどうしてもステロイドホルモンということになります。
ただステロイドホルモンはあまり長く使うと副作用が出てしまったり、長く使わなくても副作用が出る方もいらっしゃるので、できるだけ短期間あるいは必要最低限しか出しません。クローン病を維持する時はアザチオプリンという免疫抑制をするお薬を長期で出すこともあります。

Dr.大友  
なるほど。ステロイドはよく効くから炎症のひどい時にバッと出すというのはコツなんでしょうね。

Dr.菰池 
そうですね。それこそ入院したくないという方が多いと思うので、入院を回避するという意味ではステロイドのお薬はよく使いますし使わざるを得ない状況というのはありますね。

Dr.大友  
それで免疫抑制剤ぐらいまでの治療で割と良くなるものなのでしょうか?

Dr.菰池 
1回は良くなることは比較的多いですね。

Dr.大友  
1回とは活動期を抑えて寛解期に持っていけるということですか?

Dr.菰池 
そうですね。ただこの病気の特性上、長い経過の中で再発することがあります。
その場合は2回目、3回目は同じ治療ではなかなか太刀打ちできない
ことは実際に診療していて経験をします。

Dr.大友
それは困りますね。その場合はどういった治療をすることになるのでしょうか?

Dr.菰池
先ほどもお話ししましたが、栄養療法としてお食事を3食ともお薬として処方した経管栄養剤を栄養ドリンクのようにお飲みになって頂きます。
そのほかにTNF-α阻害薬が使用することが一般的だと思います。

Dr.大友  
TNF-α阻害薬で炎症の元となっている物質を抑える?

Dr.菰池 
そういうことですね。ただTNF-α阻害薬は飲み薬のような気軽なものではなくて、何週間かに1回病院に通って2時間ほどの点滴をして頂くお薬
だったり、2週間に1回ほど注射を打って頂くお薬だったりと各社から色々な剤型が出ています。
ただ飲み薬ほど気軽にやりましょうというお薬ではないので、ちょっと敷居が高い方もいらっしゃいます。

Dr.大友  
値段も高いですしね。

Dr.菰池 
こういうところで値段を言っていいのかわかりませんけど、1本何万円もするお薬もあります。
そのため医療費という観点からは医療者としては
不必要にお出ししたくない薬剤になります。

Dr.大友
そうした様々なお薬を使ってどうにか活動期を乗り切って寛解期に持っていくわけだと思います。
炎症が落ち着いた後、つまり寛解期についてはもう少しお話を
したいと思います。ちなみに寛解期はどんなお薬を飲むんですか?

Dr.菰池 
基本的に活動期の間に使ったお薬を継続していきますが、注射や点滴をいつまで続けるかどうか非常に議論が分かれるところではあります。
今のところクローン病の治療においては寛解期でも注射や点滴は続けて行うというのが一般的ですね。

Dr.大友  
それは10年というスパンで見ると半数以上の人が炎症を抑えきれなくて手術をしてしまうからということですね。

Dr.菰池 
この炎症というのは非常に強いものですし、合併症を起こしてしまった場合は手術が必要になってしまいます。
そうしたことを回避するという意味では維持療法と言って調子が良くなった寛解期でもTNF-α阻害薬という強いお薬を継続していくということの意味は非常にあると言われています。

Dr.大友
勉強になりました。
このあとは食事療法について、どんなお食事を食べたら良いのか、どんなお食事を避けた方が良いのかをお伺いしたいと思います。

 

大友博之 渋谷セントラルクリニック エグゼクティブ ディレクター

日本抗加齢医学会専門医、日本麻酔科学会専門医、日本医師会認定産業医、国際抗加齢医学会専門医(WOSAAM)

免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、再生医療、運動療法を取り入れた新しい統合医療をベースにした診療で著名人にもファンが多い。最先端の西洋医学に通じている一方で、「鍼治療の魔術師」と呼ばれるほど鍼治療の名手で東洋医学にも造詣が深い。

またワインと健康食の愛好家しても名高く、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュのワイン騎士団から名誉ある「シュバリエ」を叙任されているほか、料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有する美食家が集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会の「オフィシエ」でもある。

菰池信彦 たまちホームクリニック院長

日本内科学会認定医、日本消化器病学会認定消化器病専門医、日本消化管学会認定指導医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本ヘリコバクターピロリ学会認定感染症認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本カプセル内視鏡学会認定医、日本医師会認定産業医

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