ビタミンB1  びたみんびーわん

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ビタミンB1はチアミンとも呼ばれ、水溶性ビタミンに分類される生理活性物質です。1910年に鈴木梅太郎が米ぬかの中に、脚気(かっけ)を予防する成分であるビタミンB1を発見し、当初はオリザニンと命名されました。ビタミンB1は、エネルギー産生代謝、とくに糖質の代謝において重要な役割を果たしています。

ビタミンB1の構造と作用

ビタミンB1はピリミジン環とチアゾール環がメチレン基を介して結合された構造を持ちます。ビタミンB1は小腸で吸収された後、リン酸と結合し、その活性型であるチアミンピロリン酸(TPP)に変換されて、肝臓などの各臓器へ運ばれます。TPPはその後、細胞のミトコンドリア内に入り、糖(グルコース)やたんぱく質(アミノ酸)の代謝を担う補酵素として働きます。

糖質は人間の生命活動に不可欠なエネルギーです。TPPはとくに糖質の代謝において重要な役割を担っています。体の細胞には、活動するためのエネルギーのもとを作るクエン酸回路(TCA)という仕組みがあります。エネルギー源となる糖質は、細胞でピルビル酸という物質に分解されます。クエン酸回路の入り口で、ピルビン酸はアセチルCoAという物質に変換され、TCAサイクルに入ります。TCAサイクルでは有酸素で代謝が行われて、多くのATP(アデノシン三リン酸とも呼ばれる物質で、体内で作られるエネルギーを運ぶ役割をしている酸)が産生されます。

このとき、チアミンピロリン酸が必要になるのですが、ビタミンB1が不足するとチアミンピロリン酸が作られなくなり、糖質がアセチルCoAにならず、ピルビン酸で止まってしまいます。そのため、TCAサイクルに入ることができず、糖質はエネルギーとして完全燃焼できません。

ビタミンB1不足の症状

ビタミンB1が不足すると、ATPが産生されないためエネルギー不足になり、食欲不振、疲労、倦怠感などの症状が現れます。また、脳は糖質をエネルギー源としているため、ビタミンB1が不足すると脳や神経にも障害が起こります。ビタミンB1不足により、脳は中枢神経、末梢神経を十分にコントロールできなくなり、イライラや不安など精神が不安定になったり、集中力の低下などを招きます。

ビタミン不足による特に重症な病気は、かつて日本人の国民病とも言われた脚気(かっけ)とウェルニッケ脳症です。脚気の症状は、疲労感・息切れ・動悸・むくみ・食欲不振・手足のしびれです。軽症であれば命に関わることはありませんが、重症になると心不全を起こすことがあります。ウェルニッケ脳症は、歩行障害、眼球の運動麻痺、意識障害、けいれんなどの症状が特徴て、悪化すると昏睡状態から死に至ります。

その他にも、ビタミンB1が不足すると、糖がエネルギーまで変換されず疲労物質である乳酸に変換されて蓄積します。血中の乳酸濃度が上昇すると代謝の邪魔をし、疲労感を感じるようになります。

ビタミンB1を多く含む食品

ビタミンB1を多く含む食品は、穀類の胚芽、豚肉、レバー、豆類などで、特に豚肉にはビタミンB1が豊富です。ビタミンB1はニンニクや玉ねぎなどに含まれるアリシンと結合してアリアチミンになると吸収率が上がります。しかし、熱に弱いため、調理による損失が多いといいう欠点もあります。

ビタミンB1の推奨量は成長とともに増えていき成人男性では1.4mg、成人女性では1.1mgです。また、糖質を多くとる人や、よく体を動かす人は、エネルギーの産生が盛んなため、より多くのビタミンB1を必要とします。ビタミンB1は水溶性ビタミンですので、摂りすぎた場合は尿として排出されます。そのため、通常の食生活では過剰症の心配はありませんし耐容上限量も設定されていません。

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