サツマイモを食べておならが臭わなくなれば健康になる?
サツマイモと言えばオナラが気になる人も少なくないのではないでしょうか。
オナラの主成分は、口から食べ物などと一緒に飲み込んだ空気と食物残渣(ざんさ:小腸で消化しきれなかった食べかす)が大腸で腸内細菌が分解される際に発生するガスです。一般的にデンプンは口の中の唾液で分解して、胃腸で消化、吸収されます。サツマイモの主成分はお米や小麦のデンプンと比べると分解されるスピードが遅いのが特徴です。消化するスピードが遅くなると腸管が伸び縮みする回数(腸のぜんどう運動)が増えるので、ガスが発生しやすくなります。
ところでオナラは臭う時と臭わない時があると思いませんか?
実はオナラは腸内環境を知る上で重要なサイン。
善玉菌優位の腸内細菌叢の場合はオナラが臭わず、悪玉菌優位の腸内細菌叢の場合はオナラが臭います。
腸内に善玉菌が多い場合は臭いがほとんどない二酸化炭素やメタンが発生して、悪玉菌が多い場合は臭いのするアンモニアなどが発生します。
悪玉菌はお肉などの動物性タンパク質や脂質を多く食べている時やお酒をたくさん飲むなど腸内環境が良くない場合に増えやすくなります。悪玉菌が増えている状態は大腸にとって良い環境とは言えず大腸ポリープや大腸がんの原因にもなります。
尚、悪玉菌が多い状況を改善したいときには食物繊維の働きが欠かせません。
サツマイモのデンプンにはセルロースやペクチンなどの食物繊維の量が多いのが特徴です。なんと蒸したサツマイモはご飯に比べて10倍もの食物繊維の量を含んでいますので、腸内環境を改善したい場合はサツマイモを積極的に摂っていきたいですね。
話は戻ってオナラですが、いくら臭わないからと言ってオナラを人前でしたい人はあまりいないと思います。でもサツマイモの皮を一緒に食べることによってオナラを減らせることはご存知でしたか?サツマイモの皮に含まれるヤラピン(サツマイモを切った時に見える白い液体)という消化酵素によって消化にかかる時間を短縮することができて、結果としてオナラの回数が増えるのを防ぐことができるのです。
他にもサツマイモの皮には健康に良い成分がいっぱい。抗酸化物質として有名なアントシアニンやクロロゲン酸と呼ばれるポリフェノールやビタミン C が数多く含まれています。アントシアニンはサツマイモの他にブルーベリーやカシスなどに含まれる青紫色の色素で、視力の回復や肝機能改善する働きがあることで有名ですね。またサツマイモに含まれるビタミンCはデンプンが守ってくれるおかげで熱に強いのと、量がりんごの10倍と抗酸化作用が強いのも嬉しいポイント。
外来でサツマイモを勧めると太りやすいから嫌だと言う人も少なくありません。確かにイモは太りやすい印象がありますが、食物繊維が多いサツマイモは血糖値も上がりにくいので比較的太りにくいのが特徴。ちなみにGI値はサツマイモ55とジャガイモ90、ニンジン80、山芋75、白米88に比べてかなり低いですね。
酸化ストレスを減らす観点からも、腸内環境を改善する意味でももっと積極的に食べたい食材と言えますね。
と完璧にも思えるサツマイモですが、食べすぎると食物繊維の摂りすぎによって、かえって便秘になったり、鉄やカルシウムなどのミネラル分を吸収しにくくなったりしまうこともあります。特に大腸がんの手術後にはサツマイモを要注意とDr.川村との対談でも話題になっていました。
今日も最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。
大腸がんの後に気を受けるべき食材についてお知りになりたい方はこちらをご覧ください。
【監修】 大友博之 渋谷セントラルクリニック エグゼクティブ ディレクター
日本抗加齢医学会専門医、日本麻酔科学会専門医、日本医師会認定産業医、国際抗加齢医学会専門医(WOSAAM)
免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、再生医療、運動療法を取り入れた新しい統合医療をベースにした診療で著名人にもファンが多い。最先端の西洋医学に通じている一方で、「鍼治療の魔術師」と呼ばれるほど鍼治療の名手でで東洋医学にも造詣が深い。
またワインと健康食の愛好家しても名高く、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュのワイン騎士団から名誉ある「シュバリエ」を叙任されているほか、料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有する美食家が集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会の「オフィシエ」でもある。