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百害あって一利なしのトランス脂肪酸が日本でだけ規制されない理由

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2月28日はビスケットの日。ビスケットの語原がラテン語で「二度焼かれた物」という意味であることから、「に(2)どや(8)く」の語呂合せの意味と江戸時代に柴田方庵がパン・ビスケットの製法書を記した日に由来している。

本当のビスケットって美味しいですよね。乳糖制限をしているピエールは今となってはそんなに頻繁には食べられませんが、バーで出されるウォーカー ショートブレッドフィンガーって美味しかったなぁ。。。

さて本物のビスケットってなんでしょう??ピエールは昔ながらの製法、つまりバターで作ったビスケットかなと考えます。逆に現代的なビスケットに脂質として含まれているのがトランス脂肪酸です。でもこのトランス脂肪酸は健康に良くないということで有名ですよね。実際に2018年6月にアメリカでトランス脂肪酸を多く含む油脂(部分水素添加油脂、PHOs)の食品への使用が全面禁止になったことは記憶に新しいところだと思います。

そこで今日はトランス脂肪酸は何が問題なのかということを考えたいと思います。

まずトランス脂肪酸は自然由来のものと人工のものの二つがあります。
自然に発酵するタイプのトランス脂肪酸はお肉や乳製品の中に極少量含まれています。
人工のトランス脂肪酸は水素を添加した方法で作られます。こうした人工のトランス脂肪酸を含む食品としてよく知られているのはマーガリンやケーキ、ビスケット、スナック菓子、ドーナツ、ポテトチップス、コーヒークリーマー、フレンチフライ、マヨネーズ、ファストフード、インスタント麺だと思います。常温では液化している大豆油菜種油コーン油などを常温でも固めるために部分水素添加油脂を配合する必要があります。その過程で発生するのがトランス脂肪酸(部分水素添加油脂:PHO)です。

現在問題となっているのは人工で作られたたタイプのトランス脂肪酸。天然のトランス脂肪酸が体に悪いのか良いのかはまだ研究でははっきりとしていません。

具体的に水素を添加された人工のトランス脂肪酸(以下、トランス脂肪酸)がどのように体に悪いのでしょうか?

これまでの研究によるとトランス脂肪酸を摂ると全ての原因による死亡率が34%増えることが知られています。また体重が増えやすくなったり2型糖尿病乳がんになる確率が上がることも取りざたされています。こうした病気が増えてしまう可能性の一つとしてトランス脂肪酸が体内で慢性炎症が引き起こしてしまうことが指摘されています。

こうした健康上の問題を踏まえて世界保健機関(WHO)は、トランス脂肪酸の摂取量を摂取エネルギーの1%(約2g)未満にするよう2003年に勧告しています。
諸外国ではデンマークが2003年6月から食品中のトランス脂肪酸の量を全脂質の2%までとする罰則規定のある行政命令を制定したのに引き続いて、スイス、オーストリアも同様の規制をスタートしました。
またトランス脂肪酸の表示義務は数多くの国で義務化されており、カナダが2005年から、アメリカ、ブラジル、アルゼンチン、チリ、パラグアイ、ウルグアイなどが2006年からスタートしています。尚、アジアでは2007年から韓国がスタートしたのを皮切りに台湾、香港が表示義務を課しています。
そして前述のようにアメリカでは2018年からトランス脂肪酸を多く含む油脂(部分水素添加油脂、PHOs)の食品への使用を禁止したわけです。

こうした取り組みの結果として、飲食店でのトランス脂肪酸の使用を全面的に禁止しているニューヨークでは心疾患による死亡者数が年間10万人あたり13人少なく、約4億円の医療費の節約になったという報告もあります。

日本の現状はと言うと残念ながらトランス脂肪酸の表示義務もありません農林水産省の見解をまとめると以下の通りです。

・トランス脂肪酸については、食品からとる必要がないと考えられており、むしろ、とりすぎた場合の健康への悪影響が注目されています。日常的にトランス脂肪酸を多くとりすぎている場合には、少ない場合と比較して心臓病のリスクが高まることが示されている。
・トランス脂肪酸による健康への悪影響を示す研究の多くは、脂質をとる量が多く、その結果としてトランス脂肪酸をとる量が多い欧米人を対象としたものであり、脂質をとる量が少ない日本人の場合にも同じ影響があるのかどうかは明らかではない。

諸外国の平均的なトランス脂肪酸の摂取量は、米国では成人1人当たり5.8 g/日、欧州では男性1人当たり1.2~6.7 g/日、女性1人当たり1.7~4.1 g/日との報告があります。これらと比べて、日本人のトランス脂肪酸の摂取量は1人1日当たり平均で0.67 gとかなり少ない傾向にあります。また農林水産省が推定した日本人の平均的なトランス脂肪酸摂取量(0.92~0.96 g/日)をエネルギー量に換算すると、日本人の平均総エネルギー摂取量である1900 kcal/日の0.44~0.47%に相当します。この結果は、世界保健機関(WHO)が設定したトランス脂肪酸摂取量の上限量である、総エネルギー摂取量の1%に相当する量の半分程度です。
つまり日本ではトランス脂肪酸の摂取量は少ないので、規定をしたり表示を義務付ける必要はないと考えているようです。また消費者もトランス脂肪酸の健康への悪影響を意識してトランス脂肪酸の含まれていない商品を選ぶようになっているというのも規制をしていないことが理由の一つのようです。

ピエールの意見としては、トランス脂肪酸の健康への影響を知らない人たちも少なからず存在しているので、表示は義務付けるべきだと考えます。実際に香港などでも消費量は少なかったにも関わらず表示をするように制定されています。表示義務がないことを隠れ蓑にして取材に対して、トランス脂肪酸の含有量についてのアンケートについて回答しない企業もあるようです。またメーカーによってもマーガリンなどの商品に含まれているトランス脂肪酸の量が大きく異なっているという事実もあります。【Business Journal マーガリンに含まれるトランス脂肪酸の一覧

そして何といっても憤慨ものなのは、ある世界的なフードチェーンではアメリカではトランス脂肪酸を使っておりませんが、日本の店舗では継続的に使用しているだけではなく、食べ放題などの集客を行っているということ食べ放題のメニューの中にはフライドチキンだけではなく、今日話題のビスケットも含まれているようです。

イシペディアの対談でも川村先生や小池先生と乳がん大腸がん前立腺がんでトランス脂肪酸は気をつけるべき食材として話題になりました。

皆様には是非アボカドナッツエゴマオイルヘンプオイルオリーブオイルなどの油脂を摂ることをお勧めして、トランス脂肪酸には十分気を付けていただければと思います。

今日も最後までご覧くださいましてありがとうございました。
もう少し前立腺癌とトランス脂肪酸を含めた食品のリスクについてお知りになりたい方はこちらをご覧ください。

 

大友博之 渋谷セントラルクリニック エグゼクティブ ディレクター

日本抗加齢医学会専門医、日本麻酔科学会専門医、日本医師会認定産業医、国際抗加齢医学会専門医(WOSAAM)

免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、再生医療、運動療法を取り入れた新しい統合医療をベースにした診療で著名人にもファンが多い。最先端の西洋医学に通じている一方で、「鍼治療の魔術師」と呼ばれるほどハリ治療の名手で東洋医学にも造詣が深い。

またワインと健康食の愛好家しても名高く、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュのワイン騎士団から名誉ある「シュバリエ」を叙任されているほか、料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有する美食家が集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会の「オフィシエ」でもある。

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