イシペディア > 食事学と医療の大辞典 > 食材の大事典 > 乳製品の栄養素分析 > 脂肪肝や骨粗しょう症の予防に「チーズ(プロセスチーズ)」

脂肪肝や骨粗しょう症の予防に「チーズ(プロセスチーズ)」 ちーず(ぷろせすちーず)

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

チーズはやヤギ、などに乳酸菌や酵素(レンネット)を加え、凝固させた発酵食品です。栄養価が高く保存性が優れており、古くから世界中の人々に愛されています。日本でも、欧米の食文化が普及するとともにチーズの消費量も年々拡大しています。

チーズは世界中に1,000種類以上あるといわれますが、大きく「ナチュラルチーズ」(※1)と「プロセスチーズ」(※2)に分けられます。さらに水分の含有量や熟成方法の違いなどによってさまざまな種類のチーズが作られます。日本で生産、消費されるチーズのほとんどは「プロセスチーズ」です。

(※1)ナチュラルチーズとは、原料乳に乳酸菌や酵素を加え凝固させた後、発酵・熟成のみを行って作られたもの。カマンベールやモッツァレラ、ゴーダチーズなどが代表的。

(※2)プロセスチーズとは、ゴーダやチェダーなどハードタイプのナチュラルチーズを1種類以上加熱し、溶かして乳化剤を入れ固めたもの。加熱によって、菌や酵素を死滅させるため、味を一定に保つとともに長期保存が可能となる。

栄養素

チーズは良質な動物性タンパク質が豊富に含まれ、ヨーロッパでは「白い肉」とも呼ばれます。牛乳など原料乳の栄養が凝縮されるため、タンパク質脂質ビタミン、カルシウム、ミネラルなどが豊富に含まれ、栄養価が非常に高い食品です。

特に日本人に最も不足しているといわれるカルシウムの吸収率が高く、小魚などから吸収されるカルシウムが2030%ほどに対し、チーズは6070%と効率的にカルシウムを摂れることも特徴です。

チーズ(プロセスチーズ)の主な栄養成分(100gあたり スライスチーズ56枚 )

総カロリーと三大栄養素

・エネルギー……339kcal
タンパク質……22.7g
脂質……26g
炭水化物……1.3g

ビタミン

ビタミンA……260㎍
ビタミンE……1.1mg
ビタミンK……2㎍
ビタミンB1……0.03㎎
ビタミンB2……0.38㎎
ナイアシン……0.1㎎
ビタミンB6……0.01㎎
ビタミンB12……3.2㎍
葉酸……27㎍
パントテン酸……0.14㎎

ミネラル

ナトリウム……1100㎎
カリウム……60㎎
カルシウム……630㎎
マグネシウム……19㎎
リン……730㎎
……0.3㎎
亜鉛……3.2㎎
……0.08㎎

脂肪酸

・脂肪酸総量……23.88g
・飽和脂肪酸……16g
一価不飽和脂肪酸……6.83g
多価不飽和脂肪酸……0.56g
n-3系脂肪酸……0.17g
n-6系脂肪酸……0.39g
・オレイン酸……5800㎎
・リノール酸……390㎎
・α-リノレン酸……170㎎

その他

・食塩相当量……2.8g

効能・効果

骨粗しょう症の予防

チーズには骨を作るカルシウムが、100gあたり牛乳の56倍含まれています。カルシウムはタンパク質と結びついて体内に吸収されるため、チーズはカルシウムの吸収率が高く骨粗しょう症の予防に最適といえる食品です。また、チーズに含まれるビタミンKやリン、マグネシウムも骨の形成を促進します。

肝機能の改善

チーズには良質なタンパク質が豊富に含まれており、肝細胞を再生し肝機能を改善します。特にアミノ酸のメチオニンやスレオニンには肝機能を改善する優れた働きがあります。また、ビタミンB群には血中の中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールを減少させ、脂肪肝を予防する効果があります。

メタボリックシンドローム(メタボ)の予防

チーズには善玉ホルモンの“アディポネクチン”の産生を促進する働きがあります。アディポネクチンは、高血圧、脂質異常症、高血糖、肥満などメタボの要素を改善し、糖尿病や動脈硬化を予防します。

ただし、チーズには飽和脂肪酸も含まれるため、摂り過ぎると逆に中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールを増やす恐れがあります。一日に3040g程度を目安に食べると良いでしょう。

ダイエット効果

チーズに含まれるビタミンB1には糖質の代謝を促進する働きがあり、ビタミンB6には脂質の代謝を助ける働きがあります。エネルギーが効率的に代謝されることで、ダイエット効果がもたらされます。また、アディポネクチンの産生が促進されることで、内臓脂肪を燃焼させる相乗効果が発揮されます。

免疫力アップ

チーズに含まれるタンパク質“ラクトフェリン”には、免疫細胞のNK細胞を活性化させ、がん細胞やウイルスを攻撃し、体を守る働きがあります。また、チーズに多く含まれるビタミンAには、皮膚や粘膜を保護し、免疫力を高める効果があります。風邪やインフルエンザ、肺炎、皮膚病などの予防につながります。

東洋医学的側面

・寒熱:温(緩やかに体を温める) 
・昇降・収散・潤燥:収(気を体の内に収める作用)
・臓腑:肝、脾、肺
・五味:甘(補い滋養する作用)、酸(収斂、免疫力を高める)
・毒性:無毒

体に滋養をつけ、肉体疲労を回復します
眠りの質を高め、睡眠を改善します
気持ちの高まりやイライラを改善します
肝機能の働きを改善します
血を補い月経不良を改善します

栄養素を上手に摂るための保存方法と調理方法

もともとチーズに含まれるカルシウムは体への吸収率が高いのですが、ビタミンDを多く含む、しらすやイワシの丸干し、レバー、シイタケなどの干物やキノコ類と一緒に食べるとカルシウムの吸収がさらに良くなります。

食が細い人や高齢の方などタンパク質の摂取量が少ない人は、チーズを摂取することで効率的にタンパク質不足を補うことができます。チーズを溶かして、温野菜にかけて食べるなど調理法も工夫してみましょう。

チーズのタンパク質には肝機能を改善する働きがあり、お酒を飲む時のおつまみとしては最適です。ただし、飽和脂肪酸が多いため、食べ過ぎないように気をつけましょう。

チーズは、乾燥しやすい性質があるため、できるだけ表面がカピカピに乾燥していないものを選びましょう。

プロセスチーズの保存は23℃が最適です。乾燥しやすく、他の食べ物の臭いが移りやすいため、ラップなどでしっかり密封して冷蔵庫で保存しましょう。また、凍らせてしまうと栄養素が壊れたり、舌触りが悪くなるため注意しましょう。

チーズの製造過程で乳糖がホエー(乳清)のほうに移行するため、チーズには乳糖が含まれません。牛乳不耐症(牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする人)で牛乳が飲めない人でも、チーズなら安心して食べられます。

 

【監修】 大友博之 渋谷セントラルクリニック エグゼクティブ ディレクター

関連するカテゴリ

おすすめ記事

関連する記事はこちら