10年前に発覚 研ナオコ「橋本病」で声のキーさらに低く
10年ほど前にアメリカのシアトルとロサンゼルスでショーをしたんです。緊張していたこともあったのか、シアトルのショーが終わったあと、足に湿疹が。かゆかっただけではなく、なんとなくダルくて「体調が悪いなぁ」と思っていました。それでも、どうにかロサンゼルスのステージは終えて帰国しました。
その後、湿疹は治まっていたんですが、ダルいのはそのまま。そのうちにまた、湿疹が出るようになって……。顔にもブツブツと出て、ひどいときは顔が腫れてしまいました。メークさんが「湿疹はメークで治せるから大丈夫ですよ」と慰めてくれたのですが、相変わらず体がダルくて重い。「なんだかヘンだな」と思ってはいたんです。それでも、病院には行かなかった。病院が大ッ嫌いなんです(笑い)。
そんなある日、ニッポン放送で宇崎竜童さん、阿木燿子さんご夫妻と共演する仕事がありました。その時、自分の楽屋に行く前に、どうしてだか引き込まれるように宇崎さんの楽屋を訪ねていたんです。話をしているうちに、帯状疱疹のような湿疹が出ることやダルくて仕方がないことを話していました。
それを聞いた宇崎さんは、「いい先生がいるから紹介するよ」とその場で先生にメールをしてくださいました。病院は嫌いだけれど、そんなことは言っていられないなぁ……脳神経外科の先生ということだけど、私の症状でも診ていただけるのかしら……と思ったことを覚えています。
それで、さっそく病院にうかがってみると、先生は「徹底的に調べましょう」と、エコー、脳波、血液検査をしてくださいました。結果、「橋本病」と診断されたんです。耳慣れない病名に驚きましたが、甲状腺ホルモンが減少する病気と聞いて納得しました。ひどい状態だと手術をしなければいけないけれど、私の場合は薬でいい、と。ただし、薬は生涯飲み続けなければいけないと言われました。
■娘も「橋本病」で手術を受けた
病気に対する知識がなかったので、「へぇ~」という感じ(笑い)。とにかく病名が分かってよかった。運よく、命に関わる病気ではないことにもホッとしました。何より、薬さえ飲めばあのダルさや湿疹から解放されると思うと、うれしかったです。
同時に、その時の検査で長年苦しんでいた片頭痛についても「脳波が原因」だと分かりました。先生がその場で私の脳波を見せてくださったんですが、波動が大きい。「眠れない」と言う私に、先生は「これじゃあ眠れませんよね」とおっしゃっていました。
脳波を抑える片頭痛の薬と橋本病の薬を処方していただいて、程なくあんなにつらかった片頭痛は治まりました。現在は「チラーヂン」という橋本病の薬を毎日2錠飲んでいます。
一般に橋本病の患者はむくんだり、体重が増える人が多いと聞きますが、私は痩せてしまいました。おかげさまで今は体重も元に戻り、体調がいいから精神的にも楽になりました。ただ、声は戻りません。橋本病になると声が低くなるらしいんです。私はもともと声が低いのですが、さらに男性に近いキーになりました。それはそれで気に入っています。
甲状腺の病気は女性がかかりやすく、遺伝的要素が強いといわれるので、娘のことが心配になってすぐに検査を受けさせました。すると、やっぱり娘も橋本病。しかも、娘は甲状腺に石灰化した腫瘍があると診断されて手術をしました。だんだん大きくなるけど切除はしなくてもいいと言われたのですが、彼女は「気になるから切除したい」と希望したんです。
で、切除してみると、まだ石灰化していなくてがん細胞が生きていた。あのまま放っておいたら大変なことになっていたかもしれないと思うと、娘の決断力というか直感に感服します。2011年の話ですが、おかげさまで娘も今はとても元気に歌手活動を続けています。
橋本病という生涯仲良くしなければいけない病気になりましたが、病名がハッキリして、お医者さまともホットラインでつながっていることで、健康上の不安はなくなりました。病気になって、不安がなくなるというのもおかしな話ですが、体調が悪く、自分の体で何が起こっているのだろうと心配する方が体に悪い。病院嫌いの私が言うのもなんですが、体調が悪ければ、やっぱり病院に行って診断を受ける方がいいと思います。それも、できればセカンドオピニオンを受ければ、なお安心。治療すれば、体調は戻ります。
今は苦手だったお水も毎日飲むようにして、たくさん働いたらゆっくり休むスケジュールを組んでもらって、家族やスタッフや友達と楽しく食事をするようにしています。体の声を聞きながら、病気と付き合って、元気です。
【DR大友の視点】
今朝は研ナオコさんの記事がYAHOOでも認められました。
外来をしていると不定愁訴と呼ばれている方に甲状腺機能が低下しているのではないかと考えさせられることが少なくありません。
それだけ多くの機能に関わっているということですね。
せっかくなので甲状腺機能低下症についてまとめてみたいと思います。
甲状腺機能が低下すると生じる代表的な症状としては薄毛、疲労、代謝の低下や体重増加を引き起こすが挙げられます。
それ以外にも多彩な症状を示すことが知られていて気が滅入ったり(抑うつ)、倦怠感、寒がり、冷え、むくみ、感染しやすくなる、便秘、脱毛、湿疹、にきび、皮膚乾燥、月経不順、月経過多、不妊、流産、高プロラクチン血症、大球性貧血、悪性貧血、手足末端の痺れ、全身の痛み、高コレステロール血症があります。
原因としてはビタミンAが不足していることも考えられます。
ビタミンAは甲状腺ホルモンの活性型への変換に重要な役割を果たしています。
ご存知の通り、ビタミンAは脂溶性ビタミンです。
細胞が正常に再生する働きがあり、甲状腺ホルモンだけでなく、成長ホルモンの産生を刺激する。また、抗酸化物質としてフリーラジカルによって生じる慢性炎症を抑えるので、現代人には欠かせない栄養素であることは疑いがありません。
・ 天然ビタミンAは、動物由来組織にのみ存在する
・ 魚の肝油(タラの肝油等)、卵、レバー、牛乳、クリーム、チーズ、バターなどに含まれている
・ 脂肪をうまく吸収できないと欠乏の可能性がある
β-カロテンはビタミンAの供給源でほぼ同じ機能を持つことが知られています。
肝臓と腸管壁でβ-カロテンをビタミンAに変換します。ちなみに甲状腺機能低下、糖尿病があるとビタミンAに変換されにくくなることが知られています。
またアルコール摂取でβ-カロテンは減少するのでお酒のみはサプリメントで補充することを強くお勧めいたします。
最後にβ-カロテンは黄色果物、濃緑色・黄色・葉物野菜、人参、さつまいも、カンタロープメロン、黄色カボチャ、ほうれん草、アンズ、スピルリナ、穀物の葉茎、アルフアルファ、大麦の葉茎に含まれていますので積極的にお食事からお召し上がりください。
〔大友“ピエール” 博之〕
日本のみならずロサンゼルス、フランクフルト、香港、バンコクに拠点を持ち、個別化医療(precision medicine)を実践している。免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、運動療法を取り入れた治療で定評がある。
・ 医師 日本抗加齢医学会専門医 / 欧州抗加齢医学会専門医 / 日本麻酔科学会専門医
・ 西洋薬膳研究家、シェフドクターピエールとしても活躍中
・ 渋谷セントラルクリニック代表
・ 一般財団法人 日本いたみ財団 教育委員
・ 料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有するシェフなどが集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会のオフィシエ
・ ワインにも造詣が深く、フランスの主要産地から名誉ある騎士号を叙任している。
シャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ / ボルドーワイン騎士団 コマンドリー /ブルゴーニュワイン騎士団 シュヴァリエ