あの武漢で汗をかいて感じたミネラルの重要性
世界的に有名になった武漢の街ですが、コロナの傷も癒えて、街は平和そのもの。
ここでも物凄い歓待を受けていて毎日毎日酒池肉林。
武漢の名物料理である武漢鸭脖(鴨の首肉を煮物)、武昌魚や蒸しスープも素晴らしい。
医食同源の概念
コースの最後に出てくるデザートを食べていてふと気がついたのですが、どこに行っても必ずスイカ、トマト、メロン、パイナップルの組み合わせ。
これ、Dr.ピエールはミネラル補給の為なのではないかと推測します。
というのも、武漢は中国でも有名な灼熱の地。
この時期でも半袖で歩いていても汗が止まることのない気候。
汗をかくとナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが失われます。
疲れを感じやすくなったり、足がつりやすくなったり(こむら返り)するのは脱水だけでなく、ミネラル不足が関連しています。
水分の調整
カラダ中の水分は体重の約60%あり、常にこの水分量を維持しています。この水分量を調節しているのは脳にあるホルモンや腎臓などの臓器です。
特に腎臓はとても大切な臓器です。腎臓は人間のカラダに2つあり1つが100g程の重さです。
人間のカラダは水分が減ってしまう事に対してデリケートなため、少しでもカラダの中の水分量が変わると体調に変化が起きます。
例えば2%の水分が少なくなるだけで、喉が渇いたと感じるようになります。10%の水分が少なくなると、血液のめぐりが悪くなり(循環不全)、最悪の場合死に至ることもあります。
水分量を決めるホルモンとして脳下垂体にある「抗利尿ホルモン」が有名です。
「利尿」の言葉の意味は尿を出すということです。その言葉に抵抗の「抗」がついているので意味が反対になります。つまり、抗利尿ホルモンは尿を出しにくくするホルモンだということです。このホルモンはカラダの水分の状態によって分泌量が変わります。
水分を細かく調整するのはナトリウム、カリウム、カルシウムやマグネシウムなどの電解質と呼ばれる成分の濃度を一定に保つ必要があるからです。何故かというと電解質は濃度が適正な範囲から外れてしまうと命に係わる事態になりかねないからです。
例えば、私たちが多く水分を取っているときには血液中の水分が増えます。その分、電解質の濃度が薄くなるため元に戻さなくてはいけません。
濃度を戻すには水分を多く排出しなければならないので、脳はその状態を察知し抗利尿ホルモンの分泌を減らすことで、たくさんの尿を出します。
逆に水分不足の状態だと血液中の水分が減ります。電解質の濃度が高くなるのを防ぐために、抗利尿ホルモンの分泌を増やします。ホルモン量の調整で尿を出にくくすることで、これ以上の水分不足にならないように水分量を維持します。
この抗利尿ホルモンは腎臓に水分の調整の指示を出します。
腎臓は脳からの指令通り、水分の調節を行い尿の量を増減させます。
このようにカラダの水分の調整は様々なカラダの機能が働くことで維持できています。
スイカ、トマトはミネラルを複合的に含んでいるだけでなく、水分補給にも有効です!
おそらく茅台酒の飲み過ぎによる脱水にもきっと役に立っているはず。
医食同源の概念は風土が反映されて成立していくんだなとあらためて実感した次第です。
〔大友“ピエール” 博之〕
日本のみならずロサンゼルス、フランクフルト、香港、バンコクに拠点を持ち、個別化医療(precision medicine)を実践している。免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、運動療法を取り入れた治療で定評がある。
・ 医師 日本抗加齢医学会専門医 / 欧州抗加齢医学会専門医 / 日本麻酔科学会専門医
・ 西洋薬膳研究家、シェフドクターピエールとしても活躍中
・ 渋谷セントラルクリニック代表
・ 一般財団法人 日本いたみ財団 教育委員
・ 料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有するシェフなどが集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会のオフィシエ
・ ワインにも造詣が深く、フランスの主要産地から名誉ある騎士号を叙任している。
シャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ / ボルドーワイン騎士団 コマンドリー /ブルゴーニュワイン騎士団 シュヴァリエ