⑫ 肝臓がん AST、ALT、γGTPの見方
Dr.大友 (渋谷セントラルクリニック総院長)
今日はDr.菰池に肝臓の検査の見かたについてお伺いしたいと思います。
多くの人は健康診断を受けてASTとかALTだとかγGTPの値をチェックして、γGTPが上がったからお酒を減らさなきゃとか、γGTPが上がっていないから大丈夫と思っているのではないでしょうか。
実際のところAST、ALTの値はどのように評価したら良いものでしょう。
Dr.菰池 (たまちホームクリニック院長)
お話しにあったAST、ALT、γGTPの3種類とも法定検診と言って皆さんが測る項目ですが、肝臓にある細胞の酵素の量を調べています。肝臓にダメージが及ぶと肝臓の細胞が壊れてAST、ALT、γGTPが血中に放出されるので、これらは肝臓の細胞がどれくらいダメージを受けているかを測る値ということになります。
Dr.大友
ASTとかALTは酵素なんですね。
肝臓が壊れるとあふれ出てくるということですが、外来をしているとこうした酵素の値が上がっていないと「あっ、俺の肝臓大丈夫だな」みたいに思っている方に良く出会います。
例えば肝臓がんはアルコールの量を減らした方がいいことは知っているけれども、こうした肝臓の数値が上がっていないということで肝臓にダメージ無いのかなと考えている人が少なからずいると思うんですが。アルコールに限らず何か身体に悪いことが起きていても肝臓の酵素が壊れていないから安心なんでしょうか。
Dr.菰池
それはちょっと違いますね。
もちろん肝臓の数値が高いより低い方が良いということは間違いありません。ただ肝臓の細胞が壊れていなくても、先ほどの3項目(AST、ALT、γGTP)が低くくても肝臓に病気が隠れている可能性ということはもちろん有ります。
Dr.大友
でも症状が無いとそれ以上検査しようと思わないですね。
ダルイとか元気が無いとか浮腫みやすいとか肝臓が悪そうな症状があるけど、例えばASTとかALTとかγGTPが上がってない場合にお勧めの検査は何か有りますか。
Dr.菰池
ケースバイケースですね。アルコールをどれくらい飲んでいらっしゃるかによって次の検査をするものも変わってくるかもしれません。
例えばアルコールを飲まない方がγGTPが正常範囲なんだけど前より数値が上がってきている、ということになれば、胆道の近い部位に異常がないかその近くの酵素であるALP(アルカリホスファターゼ)という酵素やビリルビンという酵素を血液検査で追加することも有ります。
Dr.大友
なるほど。
Dr.菰池
または隠れた肝臓の病気を見つけるためにB型肝炎とかC型肝炎とか自己免疫性肝炎何などのマーカーを測ることもあります。それは全て血液検査で分かることですね。
Dr.大友
そうするとASTとかALTとかγGTPが正常範囲でも症状が有れば採血の項目を増やしていくのが最初のステップになるのですね。
Dr.菰池
我々は一番最初に採血の検査項目を増やしてみます。
Dr.大友
そうした採血項目では異常がないけど症状は有ると相談されたらどうなさるんですか。
Dr.菰池
肝臓に関して言えば血液の検査で分かるのは肝臓の働きの部分となります。
Dr.大友
はい。
Dr.菰池
形態の部分、つまり目で見て分かるもの形がおかしくないかとか、腫瘍があるか、胆石みたいなものができていないかを調べます。それを調べる一番簡便な方法は腹部超音波検査(エコー)ですね。超音波検査は手軽にできる検査ですので次に行う検査と言えます。
Dr.大友
採血をしてあまり問題が無い。でもなんとなく調子が悪いと思ったら肝臓専門の先生にエコーをしてもらうように相談するのが良いってことですね。
Dr.菰池
はい。腹部エコーを放射線技師さんもやるところも有りますけど、肝臓専門医であれば専門的に診ることができますので。
Dr.大友
なるほど。
Dr.菰池
是非ご相談いただくといいと思いますね。
Dr.大友
僕のところは自費ですけど酸化ストレスの検査なんかもやっていますけど。こうした検査について先生はどう思いますか。
Dr.菰池
色々な酸化ストレスが有ると思うんですけど、先生のところで肝臓に関してはどういった項目を測定していますか。
Dr.大友
僕のところは肝臓や胆道に関しては全て網羅的に採血した上で、更に隠れている病気が有るのかを調べるために酸化ストレスの検査をしていますね。
Dr.菰池
なるほど。私は保険診療をメインでやっていますのであまり酸化ストレスを測る機会は無いですけども、どうしても分からないことがあある場合は酸化ストレスを調べると分かることも多分有ると思います。また酸化ストレスの改善ために日常生活を見直すことによって症状が改善できる可能性も有ると思います。
Dr.大友
では肝臓のデーターについてまとめたいと思います。
GOT、GPT、γGTPを検診で調べていて問題がなかったとしても、もし何か症状があるなら病気が隠れていることがあるかもしれないので採血の項目を少し増やしてみたり、それでも解決しないようであれば形態学的に問題がないかを超音波検査で調べていくというような流れにするということでよろしいでしょうか。
Dr.菰池
それが一番手っ取り早くて簡便だと思いますね。
Dr.大友
勉強になりました。
大友博之 渋谷セントラルクリニック エグゼクティブ ディレクター
日本抗加齢医学会専門医、日本麻酔科学会専門医、日本医師会認定産業医、国際抗加齢医学会専門医(WOSAAM)
免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、再生医療、運動療法を取り入れた新しい統合医療をベースにした診療で著名人にもファンが多い。最先端の西洋医学に通じている一方で、「鍼治療の魔術師」と呼ばれるほど鍼治療の名手で東洋医学にも造詣が深い。
またワインと健康食の愛好家しても名高く、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュのワイン騎士団から名誉ある「シュバリエ」を叙任されているほか、料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有する美食家が集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会の「オフィシエ」でもある。
日本内科学会認定医、日本消化器病学会認定消化器病専門医、日本消化管学会認定指導医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本ヘリコバクターピロリ学会認定感染症認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本カプセル内視鏡学会認定医、日本医師会認定産業医