脂溶性ビタミンの吸収を促進する「パーム油」 ぱーむあぶら
パーム油はオイルパーム(アブラヤシ)から搾油される油脂です。融点が高く常温では固体です。酸化安定性(酸化しにくい性質)に優れ、保存性が良いためマーガリンやショートニング、石鹸などの原料として使われます。また、インスタント食品やスナック菓子など加工食品用の油(脂)としても広く使われています。
栄養素
パーム油の成分の50~70%は飽和脂肪酸のパルミチン酸です。パルミチン酸は動物性脂肪に多く含まれる脂のため、パーム油は植物油でありながら、組成としては牛脂やラードに近いといえます。
1gあたり9kcalの熱量を持ち、体を動かすエネルギー源として使われたり、エネルギーを脂肪として蓄えたりする働きがあります。
近年では、飽和脂肪酸は血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を増やし、動脈硬化や生活習慣病のリスクを高めるとして、過剰摂取に注意するべきという意見が多数を占めています。
一方で、パルミチン酸にはHDL(善玉)コレステロールを増やす働きがあるという報告もあり、パーム油が健康に与える影響については、まだ研究段階ともいえます。
パーム油の主な栄養成分(100gあたり 大さじ7~8杯)
・エネルギー……921kcal
・脂質……100g
・飽和脂肪酸……47.08g
・一価不飽和脂肪酸……36.7g
・多価不飽和脂肪酸……9.16g
・脂肪酸総量……92.94g
・n-3系脂肪酸……0.19g
・n-6系脂肪酸……8.97g
・オレイン酸……36000㎎
・リノール酸……9000㎎
・α-リノレン酸……190㎎
・ビタミンE……8.6㎎
・ビタミンK……4㎍
効能・効果
体のエネルギー源となる
パーム油は飽和脂肪酸の含有量が多く、豊富なエネルギーを持っているため、体を動かすエネルギー源になります。とくに激しい運動をする人やアスリートには、糖質を補う重要なエネルギーとして役立ちます。
細胞膜やホルモンを作る
パルミチン酸など脂肪酸は、体内で細胞膜やステロイドホルモン、胆汁酸などを合成する材料になります。また、血液を構成する成分としても利用されます。子供の場合、不足すると発育や成長に障害が起こる場合があります。
脂溶性ビタミンの吸収を促進する
パーム油に含まれる脂質は、脂溶性ビタミンA、D、E、Kの吸収を促進する働きがあります。脂溶性ビタミンを多く含む緑黄色野菜などを摂る際に、一緒に調理すれば栄養素の吸収率が高まります。
東洋医学的側面
・寒熱:温(体を緩やかに温めます)
・昇降・収散・潤燥:潤(体を潤す性質)
・臓腑:脾、肺
・五味:甘(補い滋養する作用)
・毒性:無毒
体のエネルギーを補充します
熱を作り、体を温め冷えを解消します
腸を潤し、便を柔らかくします。便秘の解消に役立ちます
栄養素を上手に摂るための保存方法と調理方法
パーム油は調理に使うというよりも、インスタント食品や即席めん、スナック菓子、マーガリンなど加工食品に多く使用されます。日本人の場合、日常で不足することはほとんどなく、むしろ過剰に摂取する傾向があるため、注意が必要です。
パーム油は脂溶性ビタミンの吸収を良くする働きがあるため、加工食品などと一緒に緑黄色野菜を摂るように心掛けましょう。
パーム油を摂り過ぎている場合は、食物繊維や海藻類を多く摂ることで、体内の余分な脂肪やコレステロールを排出することができます。
近年ではパーム油をトランス脂肪酸の代替として利用することが多いため、気になる人は、食品の原材料表示などをよく確かめましょう。