

お腹の具合と癇癪(かんしゃく)について考えてみる
精神科医でアララギ派の歌人、斎藤茂吉は生涯に全17冊の歌集を発表し、全17,907首の歌を詠んだそうです。
その一方で、夜尿症や現代であれば過敏性腸症候群(IBS)に似ていると思われるような頻繁な便意に悩まされ、疎開中には、バケツを借りて用を足していたこともあったそうです。
また、斎藤茂吉は非常な癇癪(かんしゃく)持ちだったそうです。
『非常な癇癪持ちであったが、患者の前では温厚に振舞っていた。その反動で家族には怒りを露わにすることも多かった』とあります。
患者さんでもあった芥川龍之介の服薬自殺や奥様のスキャンダルや病院の焼失など心理的にも社会的にもストレスが多かったことは間違いないと思いますが、もしかして腸の調子が精神的にも関係していた可能性もありますね。
先ほど過敏性腸症候群(IBS)について話題にしましたが、イシペディアでもDr.菰池と対談しております。
Dr.菰池曰くIBSとは、『排便障害といって便秘とか下痢とか、そういったものが慢性的に、数か月間続くような症状があること。他には下腹部の痛みだったり不快感だったり、そういう症状をともなう疾患の総称のこと』を言うとのことでした。
最近では腸脳相関なんて言葉も知られておりまして、腸の健康が脳の健康にも関係していることはよくご存知の方も多いと思います。
Dr.菰池はこう言っています。
『人間の腸は脳の刺激に非常に過敏に反応してしまいます。ストレスを感じてしまうと、大腸の動きっていうのは非常に過敏に動いてしまう。あるいは大腸の平滑筋(へいかつ)筋、大腸を動かす筋肉が、非常に刺激を受けてしまう。これを腸脳相関という言い方をします。』また過敏性腸症候群は主に大腸に症状が出る疾患ですが、主に胃に症状が出る疾患で機能性ディスペプシアというものもあります。胃腸症状というぐらいで、過敏性腸症候群と機能性ディスペプシアの両方に悩んでらっしゃる方も少なくありません。
こうした胃腸の症状は日々何を食べるかが大きく関係していると言われています。
有名な食事療法は グルテン除去食、乳糖除去食、フォドマップ除去食、マクロビオティックなど多岐にわたります。
現実的には一度胃腸の粘膜が荒れてしまうと、腸における免疫機構が壊れてしまいます。そのため何を食べても調子が悪くなると言うことも少なくありません。外来をしていても、何が原因で調子が悪くなっているのか分からない方も多いです。
食物過敏性試験(遅発性アレルギー)と呼ばれる検査もありますが、こういった理由で胃腸の調子が非常に悪くなっていると全ての食材に反応してしまうことも珍しくありません。DR大友はそういった場合は検査で一番反応している食材を中心に一週間ぐらいやめて頂いて、調子がどのように変わるのかを観察しています。もしくは三大アレルギーと呼ばれている卵、小麦、牛乳をまずはやめてみるというのも一つのアイディアだとも思います。
過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアは実感としてはある日突然始まったと思われる方もいらっしゃると思いますが、 それまでに便秘や下痢を放置していた方が少なくありません。今は大きな症状ではないと思っていてお薬でコントロールしている方も 、長いお休みの時にしっかりと自分の食事と胃腸の調子に向き合ってみてはいかがでしょうか?
腸の環境は頭だけではなくお肌や糖尿病などの疾患にも関係していることが分かっています。
腸を整えることは、アンチエイジング、健康寿命を伸ばすためには避けて通れない大切なことです。
今日も最後までご覧いただきありがとうございました。
菰池先生との過敏性腸症候群の対談はこちらをご覧ください。
【監修】 大友博之 渋谷セントラルクリニック エグゼクティブ ディレクター
日本抗加齢医学会専門医、日本麻酔科学会専門医、日本医師会認定産業医、国際抗加齢医学会専門医(WOSAAM)
免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、再生医療、運動療法を取り入れた新しい統合医療をベースにした診療で著名人にもファンが多い。最先端の西洋医学に通じている一方で、「鍼治療の魔術師」と呼ばれるほど鍼治療の名手でで東洋医学にも造詣が深い。
またワインと健康食の愛好家しても名高く、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュのワイン騎士団から名誉ある「シュバリエ」を叙任されているほか、料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有する美食家が集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会の「オフィシエ」でもある。