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名シェフと考える医食同源。バスク地方の3つ星シェフ、エネコ・アチャ・アスルメンディさん

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医食同源とは、中国の薬食同源思想から着想を得て日本で作られた言葉。お食事に気を付けることで、病気を予防したり、治療したりする哲学のこと。こうした概念は決してアジアだけで考えられていたわけではなく、紀元前からヒポクラテスが提唱しているように古今東西から食事と健康の関係は切っても切り離せないものでした。

今回はバスク地方ビスカヤの名シェフで、2012年に最年少(当時)でミシュラン3ツ星を獲得したエネコ・アチャ・アスルメンディさんにお料理の哲学と健康に関する活動についてお伺いしました。エネコさんは特にサステイナビリティと環境や伝統に配慮しながら新しいものを作るパッションを大事にしていることがお話しの端々から感じました。

エネコ・アチャ・アスルメンディ氏(写真中央)

〚グラフィックデザイナー麹谷宏氏の会でシェフと対談〛

DRピエールとしては、環境に対するサステイナビリティの一環として二酸化炭素の排出削減を強く意識してレストランの運営をしている話が印象的でした。そのために太陽光発電や地熱発電を活用しているほか、地産地消にこだわってフードマイレージを減らす、レストランへの食材の一括配達することによって輸送で生じる二酸化炭素を減らすことを徹底しているとお話しされていました。

そんなエネコシェフが人の健康に着目し始めたのが2017年。レストランを訪れる人だけでなく、レストランで働いているスタッフ、地域の住民のために’食と健康’という大きなテーマで活動を始めます。

レストランを訪れるお客様に対する心配りとしてはあらゆるアレルギーや乳糖グルテンなどの食物不耐症などの食べられない食材や苦手な食材に関して、たとえ当日告げられても完ぺきに対応されることを信条としているというお話しでした。これは当たり前のように思えて、完璧な料理の構成を旨とするスターシェフのレストランでは非常に難しいことだと思います。実際に東京でのスペシャルディナーの際にも、お客様からの突然の不耐症のリクエストにも給仕スタッフがキッチンに確認することなく承るシーンを見かけました。普段からレストランのシステムとして取り組まれていることが良くわかるエピソードだと思いますし、そのホスピタリティーに感激しました。

スタッフの健康にも注意を払うのもエネコ流。レストランのスタッフの仕事は、過密になりがちとのことから栄養と休息には特に気を払っているとお話しされていました。そのためにスタッフが職場から早く帰って家族と健康的なお食事を食べながら幸せな時間を過ごしてほしいという考えのもと、ディナータイムの回数も制限しているとのことでした。

またレストランだけでなく地域の人々のためにも、食を通じて健康に対して役に立ちたいと地域の中核病院と連携して様々なプロジェクトを進めていることもスライドをみながらご説明いただきました。

〚写真を見ながら活動をご説明〛

その一つがレシピ本。バスクは海と山の恵みにあふれた素晴らしい食材の宝庫なので、こうした食材を活かして人々を健康にしするレシピを考案することに喜びを感じているとのこと。すでに医師や栄養士と連携しながら小児の肥満、心臓病、糖尿病、肝臓疾患に対するメニューを考案をして本として出版していて、その収益は寄付するという徹底ぶり。こうしたレシピを活かして地域の病院で供される給食のお食事の内容を見直すだけではなく、食器のデザインもすることで、病院の給食の在り方を変え素晴らしい食体験になるようにプロデュースしているそうです。

レストランを訪れる人々だけでなく、バスク地方を美食の町から美食と健康の町にしたいという意気込みが良く伝わってきました。スペイン流の医食同源がスタートしていることをお話を伺いながら興奮するとともに、観光立国を目指す日本でも、食事と医療が結びついたテーマでおもてなしできるようにすべきと実感した夜となりました。

写真は2017年にスペインの本店、アスルメンディを訪れたときのもの。

 

 

【監修】 大友博之 渋谷セントラルクリニック エグゼクティブ ディレクター

日本抗加齢医学会専門医、日本麻酔科学会専門医、日本医師会認定産業医、国際抗加齢医学会専門医(WOSAAM)

免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、再生医療、運動療法を取り入れた新しい統合医療をベースにした診療で著名人にもファンが多い。最先端の西洋医学に通じている一方で、「鍼治療の魔術師」と呼ばれるほどハリ治療の名手で東洋医学にも造詣が深い。

またワインと健康食の愛好家しても名高く、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュのワイン騎士団から名誉ある「シュバリエ」を叙任されているほか、料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有する美食家が集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会の「オフィシエ」でもある。

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