抗うつ薬を飲んでも太りにくくなるお食事とは?

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Dr.大友 (イシペディア編集長)
うつ病は少なく見積もって人口の0.5%以上、一般外来受診者のうちでうつ状態を示す人は10%くらいいるのではないかと推測されています。そういった意味では外来で抗うつ薬などの精神科で処方されるようなお薬を飲んでる方も少なくないですか?

Dr.河村(渋谷セントラルクリニック院長)
はい。精神科や心療内科でお薬を処方されている方は少なくありません。

Dr.大友
太りやすいお薬と太りにくいお薬があるという話でしたが、少し詳しくお話しいただけますか?

Dr.河村
今回のテーマはうつですので、使われるお薬はある程度限られます。抗うつ薬、睡眠薬、そして従来は統合失調症に使われていた非定型精神病薬と言われるお薬が抗うつ効果を高めるということで処方されていると思います。

Dr.大友
この中で体重を増やすことが多いお薬はどんなものですか?



Dr.河村
まずタイプ別に分けてみましょうか。抗うつ薬の中で体重をきたしやすいのはトリプタノールというお薬です。

Dr.大友
これは三環系抗うつ薬と呼ばれる古典的なお薬ですね。痛みの世界でも帯状疱疹後神経痛などの神経痛によく使われているお薬ですね。

Dr.河村
トリプタノール以外の三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬は太りやすいイメージがあります。

Dr.大友
こうした古典的なお薬は今の精神科の先生はあまり処方なさらないのではないですか?

Dr.河村
そうですね。確かに私のところを訪れる方は慢性の痛みで使用している人が多い印象があります。

Dr.大友
最近処方されるようなSSRIやSNRIなどの比較的新しい抗うつ薬に関してはいかがですか?

Dr.河村
これは非常に難しい質問ですね。SSRIに関してはインスリン抵抗性を下げるという研究もあれば、SSRIがインスリン抵抗性を高めることによって太りやすくなるという研究もあります。パロキセチン(商品名パキシル)はSSRI 中でも古くからあるお薬ですが、個人的には少し太りやすいような印象もあります。

Dr.大友
他の SSRI ではいかがですか? 塩酸セルトラリン(商品名ジェイゾロフト)、フルボキサミンマレイン(商品名ルボックス、デプロメール)などのことです。

Dr.河村
比較的新しい SSRIに関しては そこまでではないような気がします。デュロキセチン(商品名サインバルタ)、ミルナシプラン(商品名トレドミン)などのSNRIもさほど太りやすくない印象です。

Dr.大友
抗うつ薬以外ではいかがですか?

Dr.河村
非定型精神病薬の中でもクロザピン(商品名クロザリル)、オランザピン(商品名ジプレキサ)、リスペリドン(商品名リスパダール、リスペリドン)は太りやすい傾向にあるような気が致します。同系統の薬でもクエチアピン(商品名セロクエル)は上記の薬に比べると太りにくいかなと思います。

Dr.大友
なるほどですね。お薬によって太りやすくなると患者さんはどのように反応するものですか?

Dr.河村
やはり服薬を守らなくなってしまう人が多い印象です。太りやすくなるからお薬を内緒で飲まないというのはよく見かけます。

Dr.大友
それは良くないですね。 ただ患者さんはなかなか先生に言いにくかったりするんですよね。

Dr.河村
そういった場合は私が代わりにお手紙を書くこともあります。

Dr.大友
河村先生はどんなことをアドバイスしたり、治療をしたりするのですか?

Dr.河村
まずはお薬のせいで体重が増えているのかどうかをしっかり見極めたいと考えております。
うつっぽくて食欲がなかったのが食欲が出てきたのは良いのですが、甘いものばかりを食べたりしているケースも少なくありません。太りにくくするだけではなく、うつを改善するためにはどのような食べ物を摂れば良いかをしっかりと指導しています。

Dr.大友
例えばどういうものがうつを改善するとお考えですか?

Dr.河村
簡単には言えませんが、今回のテーマで言うのであれば太りやすくて、うつっぽいという人が多いと思いますのでミネラル不足タンパク質不足になっていないかはチェックします。

Dr.大友
ミネラル不足とは具体的には?

Dr.河村
マグネシウム亜鉛カルシウムが十分取られているかお食事の内容を聞いたり、採血で調べたりします。女性であれば生理からくる貧血貯蔵鉄の低下がないかも同様に調べています。

Dr.大友
タンパク質不足はよく認められるのですか?

Dr.河村
やはりうつ状態にあると自分で料理をしたりすることができなくて、コンビニなどで手軽で食べられるものやファーストフードの外食で済まされている方が多く認められます。結果としてタンパク質が足りなくなっていることはよく見受けられます。

Dr.大友
私もイシペディアで保存料からミネラルが足りなくなる可能性について寄稿したことがあります。他にも気をつけるべきことはありますか?

Dr.河村
私はいつも口を酸っぱく言っておりますが、ビタミンDが低下していないようにすることが重要だと考えています。日本の日照では十分なビタミンDを得ることができないと思いますので、調子が悪い場合にはサプリメントの摂取を積極的に進めています。また病状によっては抗うつ薬を変えられない場合はメトホルミンなどのインスリン抵抗性改善薬を処方することもあります。

Dr.大友
医師としては太りやすい抗うつ薬は慢性炎症を引き起こすので、体重に大きく影響しないお薬を使ってもらえると良いですよね。

 

〔大友“ピエール” 博之〕

日本のみならずロサンゼルス、フランクフルト、香港、バンコクに拠点を持ち、個別化医療(precision medicine)を実践している。免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、運動療法を取り入れた治療で定評がある。

・ 医師 日本抗加齢医学会専門医 / 欧州抗加齢医学会専門医 / 日本麻酔科学会専門医
・ 西洋薬膳研究家、シェフドクターピエールとしても活躍中
 渋谷セントラルクリニック代表
 一般財団法人 日本いたみ財団 教育委員

・ 料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有するシェフなどが集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会のオフィシエ
・ ワインにも造詣が深く、フランスの主要産地から名誉ある騎士号を叙任している。
 シャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ / ボルドーワイン騎士団 コマンドリー /ブルゴーニュワイン騎士団 シュヴァリエ

河村優子 渋谷セントラルクリニック 院長

医学博士、日本抗加齢医学会専門医、日本麻酔科学会専門医、特定認定再生医療等委員会 委員、FTP認定マットピラティスインストラクター

ダイエットをこよなく愛する女性医師。そのため患者さん目線でダイエットが上手くいかない原因を追究している
趣味:俳句、ワイン(シャンパーニュ騎士団、ボルドーワイン騎士団、ブルゴーニュワイン騎士団、日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会のメンバー

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