⑦ 潰瘍性大腸炎 症状が悪化しているときは病院で断食
Dr.大友 (渋谷セントラルクリニック総院長)
潰瘍性大腸炎のお食事で気をつける事と言うのは食物繊維という話でした。
炎症が起きている時は食物繊維の摂り過ぎはあまりよくないという話でしたが、食物繊維といっても色々ありますよね。
Dr.菰池 (たまちホームクリニック院長)
そうですね。水溶性食物繊維だったり不溶性食物繊維だったり。
Dr.大友
どちらかと言うと潰瘍性大腸炎には不溶性食物繊維が良くないのでしたね?
Dr.菰池
そうですね。水溶性食物繊維の方がベターだと思います。
Dr.大友
不溶性食物繊維と言うとサラダとか、ごぼうとか固いものをイメージします。
Dr.菰池
一般的な常識としては、繊維の多いサラダに多く含まれてます。
Dr.大友
これまで一般的には健康にいいと言われてきたサラダなどの食物繊維なのに、潰瘍性大腸炎が悪化している時はどうしてダメなんですか。
Dr.菰池
腸を刺激してしまうんですね。簡単に言うと不溶性の食物繊維が入ってくると、腸が頑張って動かそうとしてしまう。
Dr.大友
腸の中に不溶性の食物繊維があるとそれを押し出そうとすると言うことですか。
Dr.菰池
そうですね。
Dr.大友
腸が一生懸命頑張って動いてしまう。
Dr.菰池
炎症がある状態で腸を動かさせてしまうと治らないのです。
Dr.大友
傷口に塩を塗る状態なわけですね。
Dr.菰池
そういうイメージですね。
Dr.大友
炎症が強い時は水溶性食物繊維はあまり摂らない方が良いですか?
Dr.菰池
水溶性の場合は理論上ですけれども、そこまで腸に刺激を与えないとは言われています。
Dr.大友
そうですよね。
でも昆布とかひじきとかの水溶性食物繊維を食べると、腸に優しいくらい十分軟らかいのかと考えちゃうけど。
Dr.菰池
そういう問題はありますけどね。
Dr.大友
むしろ水溶性食物繊維のサプリメント(パウダー)の方がいいぐらい?
Dr.菰池
あぁ。
Dr.大友
水に溶かして飲むみたいな感じで。
Dr.菰池
程度の問題なんでしょうけど、本当に悪い時はそうかもしれませんね。
下痢が1日何回も出てる状態で敢えて水溶性の食物繊維を摂らなくていいと思いますが、必要があれば仰ったようにサプリメントで代用はできると思います。
Dr.大友
ずばり潰瘍性大腸炎の食事において何が一番良くないですか。気をつけることいっぱいですよね。
みんなそんなに守れるんですか。
Dr.菰池
そうですね。
守れる優等生の患者さんもいらっしゃいますけども。
Dr.大友
さっき優等生の患者さんに多い病気だって言ってましたからね。
Dr.菰池
そうですね。だけど働き盛りの方がなる病気という意味では、なかなか食事のことまで頭が回らない方のほうが多いのは事実ですよね。
Dr.大友
なるほど。
Dr.菰池
どれが一番大事かと言われても難しいんです、どれも大事だと思うので。
でも低脂肪、低刺激、低繊維、低食物繊維そのあたりお食事のことを低残渣食と言いますけれども、要は悪い時は食べた物が糞便にならないように、無理に腸を動かして残渣を作らないようにする、そういう食事を心がけて頂く方がいいかと思います。
Dr.大友
断食とかも流行りじゃないですか。
Dr.菰池
はい。
Dr.大友
断食どうですか。腸には負担かからないですよね。
入院は点滴して断食している側面もありますね。
Dr.菰池
そうですね。
断食するわけですよね。時と場合によると思うんですけども、いわゆる腸の中、消化管の中をリセットするという意味では良いのかもしれませんね。
Dr.大友
なるほど。あまり病気の勢いが強すぎる時は断食。
Dr.菰池
病院で断食。病院だと点滴をしてますので、そのぶん水分補給ができます。
ただ断食といっても、ご自宅で1週間で病気を良くするんだと思って点滴をしないで何も食べないでと言うのとはちょっと違う。
Dr.大友
炎症がある時は、脱水になりやすいですからね。水分を摂ることも非常に重要な治療ですからね。
Dr.菰池
そういう意味では水分をしっかり摂って、残渣にならない、便にならないような軽い断食と言うのが大事です。
先ほど潰瘍性大腸炎の治療のところで出ませんでしたけども、栄養療法として脂肪がゼロの栄養剤というのは病院で処方できたりもします。
もちろん市販でもそうしたのを売ってるものもありますけども。
Dr.大友
例えば?
Dr.菰池
市販の物だとなんだろうな…ちょっと商品名が出てこないですけども。
Dr.大友
病院だと。
Dr.菰池
病院だとエレンタールなんて言う。
Dr.大友
エレンタール。
Dr.菰池
そういうものをご自分の判断で悪い時だけ、食事の代用にして頂くと言う患者さんもいらっしゃいますね。
Dr.大友
なるほど。
Dr.菰池
味がちょっと単調だったりするので人気があるかどうかと言うとあまりないですけども。
Dr.大友
置き換え食的な食事のイメージ?
Dr.菰池
置き換え食的に、入院するぐらいだったらそれを薬として飲みますという方は結構いらっしゃいますね。
Dr.大友
なるほど。非常にわかりやすいですね。
話は変わりますが、グルテンフリーとか乳糖フリーとかは。
Dr.菰池
それもいいんじゃないでしょうかね。
体質にもよりますし、乳糖がすべての方に合わないとも言い切れないとも思うんですけども、体質的にやはり乳糖とか乳製品が合わないような方の場合はそういった食事療法と言うのも有効かとは思います。
Dr.大友
それはある程度良くなったあとにした方がいいんですよね。
Dr.菰池
そうですね。あまりひどい炎症、活動性の炎症がある状態の場合はそこまで意識しなくてもいいとは思います。
Dr.大友
なるほど。非常に勉強になりました。
大友博之 渋谷セントラルクリニック エグゼクティブ ディレクター
日本抗加齢医学会専門医、日本麻酔科学会専門医、日本医師会認定産業医、国際抗加齢医学会専門医(WOSAAM)
免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、再生医療、運動療法を取り入れた新しい統合医療をベースにした診療で著名人にもファンが多い。最先端の西洋医学に通じている一方で、「鍼治療の魔術師」と呼ばれるほど鍼治療の名手で東洋医学にも造詣が深い。
またワインと健康食の愛好家しても名高く、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュのワイン騎士団から名誉ある「シュバリエ」を叙任されているほか、料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有する美食家が集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会の「オフィシエ」でもある。
日本内科学会認定医、日本消化器病学会認定消化器病専門医、日本消化管学会認定指導医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本ヘリコバクターピロリ学会認定感染症認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本カプセル内視鏡学会認定医、日本医師会認定産業医