④ 潰瘍性大腸炎はどのように治療するの?
Dr.大友(渋谷セントラルクリニック総院長)
潰瘍性大腸炎の治療、診断と治療についてお伺いさせて頂きたいと思います。診断は基本的には内視鏡でしょうか?
Dr.菰池 (たまちホームクリニック院長)
そうですね。
もちろん病院に行ってまず内視鏡しようと言われることはないですけども、まずは血液検査だったりお腹の診察をしてもらったり、場合によってはレントゲンということになります。
それで潰瘍性大腸炎が疑わしいと言うことになればおそらく大腸の内視鏡を勧められると思います。
Dr.大友
なるほど。内視鏡ですぐ見つけられるものなんですか。先ほどポリープのよりは分かりにくいこともあるという話もありました。
Dr.菰池
大腸の内視鏡をすれば潰瘍性大腸炎かどうかというのはだいたいすぐわかります。
Dr.大友
なるほど。
Dr.菰池
診るべき人が診たらですけどね。
先ほど話に出ましたけど直腸、つまりお尻の穴の少し奥の所から炎症がスタートすることが多いのですね。
潰瘍性大腸炎の特徴というのは、びまん性の炎症と言って全周性の炎症なんですね。ワッと炎症が拡がっているという感じ。
Dr.大友
腸の全体が全面が一様に炎症が起きて、腫れている。
Dr.菰池
腫れている。浮腫んでいる状態でございます。
Dr.大友
大腸の内視鏡を入れた瞬間で、あっ腫れてるなとて言うのはわかってしまう?
Dr.菰池
そうですね。
Dr.大友
痔じゃないなって言うのは内視鏡をすればすぐわかりますね?
Dr.菰池
はい。
病理検査と言いいまして、内視鏡をした時に組織をつまんできて顕微鏡で検査に出すこともあります。
顕微鏡で病理の先生が潰瘍性大腸炎ですと判断してくださって初めて確定診断にはなります。
Dr.大友
はい。
Dr.菰池
ただ大体診て大方の先生は分かると思います。
Dr.大友
でも確定診断するために組織を取って病理の検査をする。
Dr.菰池
はい。
Dr.大友
そして見つかってしまったとします。きっと不安でしょうね。
Dr.菰池
そうですね。
Dr.大友
10代、20代、30代のちょっと生真面目な、もしかして言葉として良いのかどうかわからないけど神経質な真面目な子がなりやすいと言うようにも聞いております。
Dr.菰池
そうですね。
なぜだかわかりませんけども、そういう方はきちんと病院に来られるからかもしれません。
やはり学生さんとか社会人の方でも真面目な方が多く相談にいらっしゃる印象があります。
Dr.大友
なるほど。医大生もいるんですか。
Dr.菰池
多いです。ちょっと神経質な医大生とかも多いのです。
医学部はひと学年100人ぐらいいるんですけども100人中1人、多い学年は2~3人この病気の方が今いるんですね。
Dr.大友
なるほど。確かに年間4~5000人増えているという計算からするとその比率は結構多いですね。
Dr.菰池
多いと思います。たまたまではないような気はします。
Dr.大友
なるほど。やっぱりそういうストレスとかそういうものが関係している。
さっきライフスタイルといったけど元々のそういう性格とかね、そういう性格的なそういうものがもしかしてあるかもしれないと。
Dr.菰池
と思いますね。
Dr.大友
そういった方はどんな治療するんですか。
Dr.菰池
そうですね。最初の重症度にもよると思うんですね。
最初から重症の方はもう即緊急で入院をして頂いて、食事を摂らないとか点滴をするとていう治療もあるんですが。
Dr.大友
重症と言うのはどういう状況が重症っていうんですか。
Dr.菰池
そうですね。
重傷は先ほど症状をお話した以外に発熱だったり血便が出過ぎて貧血になっている、貧血のせいで脈が早くなっているとか、そういうのがあれば重症になります。
Dr.大友
なるほど。そうすると輸血したりする?
Dr.菰池
場合によっては輸血ですね。
Dr.大友
点滴をして少しバランスを整えるところから、治療というよりはもう全身状態を治すところからスタートですね。
Dr.菰池
そうですね。
Dr.大友
重症が落ち着いてきたらどうするんですか。
Dr.菰池
内服薬が基本ですので飲み薬です。いわゆる5-ASA剤が治療の大前提、大基本となります。これは腸の粘膜の炎症を抑えるというお薬ですね。
Dr.大友
なるほど。その5-ASA製剤、5-アミノサリチル酸は一般薬の名前だとどんな風に呼ばれますか。
Dr.菰池
よく出ているのはペンタサとかアサコールとかリアルダという名前のお薬になります。
Dr.大友
そういったものが出ているという。その5-ASA製剤でみんな良くなるものですか。
Dr.菰池
良くならない方もいらっしゃいますね。
Dr.大友
それはどうして?お食事とか守らないから?
Dr.菰池
それも一因ですし、あとは炎症そのものがもう強くて5-ASA製剤だけでは太刀打ちできないと言う方もいらっしゃいます。
Dr.大友
なるほど。
Dr.菰池
時と場合によるんですけども、ステロイド剤いわゆるステロイドホルモンというお薬を使うことが多いです。
Dr.大友
副腎皮質ホルモンのことですね。
Dr.菰池
はい。
Dr.大友
なるほど。それは短期的にボンと使うのでしょうか。
Dr.菰池
そうですね。ご存知の方もいらっしゃると思いますけど、あんまり長く使うと大きな合併症ができてしまいます。大体使う時ってもう1か月とか2か月とか3か月以上は使うことは避けた方がいいと言われてますね。
Dr.大友
潰瘍性大腸炎ではあんまり長期間は使わないのが今の主流とということになっているわけですね。それでみんな良くなりますか?
Dr.菰池
みんな良くなればいいんですけども良くならないんですね。
Dr.大友
なるほど。
Dr.菰池
良くなる方も多いんですけども、それだけでは太刀打ちできないレベルの炎症の方もいらっしゃいます。
Dr.大友
そうするとなんか奥の手があるんですか。
Dr.菰池
免疫抑制剤と言って飲み薬でそのステロイドホルモンの役割を代用できるようなお薬もあることはあるんですね。
Dr.大友
もともと免疫抑制剤はどんな病気に使われたりするんですか。
Dr.菰池
リウマチとか関節炎とかですね。あと目の病気であるぶどう膜炎でも使われていますね。
Dr.大友
基本的には免疫を少し抑えるようなお薬で自己免疫疾患に対して使うお薬ということですね。
Dr.菰池
ただちょっと効き始めるのに時間がかかったり、副作用があったりと言うことで、最近はもう少し切れ味がいいお薬で抗TNFα阻害薬というのがでてきています。
Dr.大友
さっき全身の炎症の原因になっているかもしれないと言っていたTNFαですね。
Dr.菰池
そうです。
Dr.大友
それをどんなふうに治療するんですか。
Dr.菰池
先ほどお話がでたステロイドホルモンが効かない方、あるいはステロイドホルモンに頼らざる負えない方ですね。
3か月、4か月ずっと使わなければいけない方や、1年に何回もステロイドを使わなきゃいけない方はTNFαを使うことが多いです。
Dr.大友
なるほど。
Dr.菰池
最近はいろんなお薬が出ていて、一番古くからあるのは点滴のお薬ですね。
最近ではインスリンのように二週間に一回ごとにご自分で皮下注射打っていただく打っていただくようなものもあります。
また少し系統が違うんですけど飲み薬のものも、TNFαとは違うタイプですけども出てきています。
Dr.大友
治療の進歩も今はすごい。
Dr.菰池
すごいです。
ここ数年でもうたくさんのお薬が開発されてきていて、我々からするとすごく選択肢が増えてきている。
患者さんからしても選択肢が増えてきている分野ではあると思います。
Dr.大友
治療薬が充実しているのは非常に良いことだとは思うんですが、できるだけその重症のお薬を使わない方がいいんですよね。値段も高くなるし。
Dr.菰池
これは患者さんが気にされることでは本来ないのかもしれませんが、医療費という意味で考えると先ほどの点滴とかだと1本うん十万円のお薬もあるんですね。
Dr.大友
結構自己負担額も結構な額ですね。
Dr.菰池
上がってきますね。
なので、もちろん必要な方にはそういう治療をお勧めはしますけども、できる限り患者さんが注射とか点滴を打つよりも飲み薬で何とかなった方が、僕が患者さんだったら絶対いいと思います。
やはり値段のこともそうですし、患者さんのライフスタイルを制限しないって言う意味では飲み薬で何とかなるようにできるだけ我々医療者も配慮をすることを考えて治療しますね。
Dr.大友
そういった上で重要なのが食事という結論でもよろしいですか。
Dr.菰池
もちろんそうだと思います。
Dr.大友
このあとは潰瘍性大腸炎を悪化させないようなライフスタイルやお食事についてお伺いしたいと思います。
Dr.菰池
はい。
大友博之 渋谷セントラルクリニック エグゼクティブ ディレクター
日本抗加齢医学会専門医、日本麻酔科学会専門医、日本医師会認定産業医、国際抗加齢医学会専門医(WOSAAM)
免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、再生医療、運動療法を取り入れた新しい統合医療をベースにした診療で著名人にもファンが多い。最先端の西洋医学に通じている一方で、「鍼治療の魔術師」と呼ばれるほど鍼治療の名手で東洋医学にも造詣が深い。
またワインと健康食の愛好家しても名高く、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュのワイン騎士団から名誉ある「シュバリエ」を叙任されているほか、料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有する美食家が集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会の「オフィシエ」でもある。
日本内科学会認定医、日本消化器病学会認定消化器病専門医、日本消化管学会認定指導医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本ヘリコバクターピロリ学会認定感染症認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本カプセル内視鏡学会認定医、日本医師会認定産業医