

見た目を裏切る味覚の再構築カルボナーラ
卵の中に秘められたカルボナーラのエキス
若くして引退間近の奇才、永島シェフ率いるレストラン81にて、「カルボナーラ」という名のもとに現れたのは、見た目が卵とチーズだけという驚きの一皿です。
あらかじめ卵の中にエキスが入れてあるため、パスタもベーコンも入っていないのに、味覚としてはカルボナーラを感じることができ、不思議な体験となりました。
カルボナーラの由来は、炭火焼職人が山籠もり用に作った保存食であるといわれています。
激しい労働をする人のためのカロリー補給食であり、卵から必須アミノ酸や水溶性・脂溶性のビタミンを摂取するための料理でした。栄養過多の現代に生きる我々には栄養バランスや調理法について考えないといけない料理でもあります。
だからこそパスタの糖質のことも、ベーコンなどの加工肉のことも気にせずに味わえるこのカルボナーラは斬新で、身体にもありがたい見事な再構築でした。
温度で変わる卵の栄養価と健康へのこだわり
この料理で特に印象的だったのは、温泉卵を絶妙な火入れで提供するというアイデア。
というのも卵の栄養は温度によって吸収率が大きく変わるからです。
卵は生で食べるとたんぱく質が50%くらいしか吸収されないため、吸収率を考えると多少は加熱する方がオススメです。
ただし、加熱しすぎるとビタミンB、ビタミンDなどの栄養素は減ってしまうのでバランスが大事です。
私的には卵の栄養素を余すことなく受け入れるためには、65度くらいの温度でゆっくりと加熱する温泉卵スタイルが最適だと考えています。
シェフの感性による再構築は、見た目を楽しませるだけでなく、現代人のライフスタイルに合わせて健康にもオマージュしている逸品だと感じました。
とはいえ、パスタとベーコンの脂にたっぷりコショウが効いたカルボナーラをワインと一緒に味わう贅沢も、捨てがたいものであることに変わりはありません。
81
東京都港区西麻布4丁目21−2 コートヤードHIROO
〔大友“ピエール” 博之〕
日本のみならずロサンゼルス、フランクフルト、香港、バンコクに拠点を持ち、個別化医療(precision medicine)を実践している。免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、運動療法を取り入れた治療で定評がある。
・ 医師 日本抗加齢医学会専門医 / 欧州抗加齢医学会専門医 / 日本麻酔科学会専門医
・ 西洋薬膳研究家、シェフドクターピエールとしても活躍中
・ 渋谷セントラルクリニック代表
・ 一般財団法人 日本いたみ財団 教育委員
・ 一般社団法人食の拠点推進機構 評価認証委員/食のプロフェッショナル委員
・ 料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有するシェフなどが集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会のオフィシエ
・ ワインにも造詣が深く、フランスの主要産地から名誉ある騎士号を叙任している。
シャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ / ボルドーワイン騎士団 コマンドリー /ブルゴーニュワイン騎士団 シュヴァリエ