⑤ 緩和ケアでお医者さんができること

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【Dr.大友とDr.川村の対談動画はこちらをclick】

Dr.大友(渋谷セントラルクリニック総院長) 
がんにおける体重減少の一つに代謝があって、慢性炎症が生じていることが一つの原因だと伺いました。
それに対してお食事でできることは分岐鎖アミノ酸のようなアミノ酸製剤だったり、DHA/EPAを始めとするオメガ3不飽和脂肪酸が有用だったりというお話でした。
ところでお薬でそういうことしてくれるものってあるんですか。

Dr.川村(川村病院副院長)  
市販でも売られてるようなロキソニンといった類のNSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛剤。

Dr.大友 
非ステロイド性の消炎鎮痛薬。

Dr.川村 
炎症を抑えるステロイドのお薬。これもがんの終末期にはよく使われるお薬です。

Dr.大友 
ステロイドも種類によっては食欲が増したりしますものね。

Dr.川村 
そうですね。

Dr.大友 
注射でするんですか。

Dr.川村 
注射ですることもありますし、内服で飲んでいらっしゃる方もいらっしゃいます。

Dr.大友 
代替医療というか、例えば漢方とかそういったものを使うことも外来ではありますか。

Dr.川村 
そうですね。
終末期に関わらずお腹を動かす目的もしくは食欲を増進させる目的で漢方を使うことは日常診療で行われています。

Dr.大友 
例えば?

Dr.川村 
六君子湯(りっくんしとう)と呼ばれるものは食欲を増やしたり、大建中湯(ダイケンチュウトウ)なんかはお腹を動かすお薬として一般的に使われています。

Dr.大友 
確かに六君子湯はグレリンを活性化させると言いますよね。グレリンは食欲に対して重要だって話もありました。
お腹が動きにくくなる原因というのは、例えば消化器のがんだったり、転移していたりするとお腹の動きが悪くなることもあると思うんですが、麻薬系の痛み止めはお腹の動きを動きにくくしますよね。

Dr.川村 
はい。

Dr.大友 
そういうのにも大建中湯を使ったりしますか。

Dr.川村 
そうですね。
モルヒネを代表とする麻薬は消化管の運動を少し止める方向に動きますので、そういったフォローに対しても漢方薬を使用することがあります。

Dr.大友 
それ以外どうですか。
吐き気止めみたいなものとか。メトクロプラミド(プリンペラン)を使うこともありますか。

Dr.川村 
ありますね。
そういったもので症状のコントロールを図ることがあります。

Dr.大友 
お医者さんとしてできることってそういうとこですよね。

Dr.川村 
そうですね。お薬としてはそういったものが代表的なものかなと思います。

Dr.大友
最後に、家族。本人もすごくつらいんですけど周りの家族も結構辛いと思うんですよね。
どのようなアドバイスをするんですか。例えば旦那さんががんで食欲が細くなっていると奥さんは結構不安になると思います。
どんな言葉をかけてあげるのが良いものなんですか。

Dr.川村 
そうですね。
それを一言で言うのはなかなか難しいですけど、ご家族の特徴またはその患者さんとの人間関係もあるでしょうし、その人その人に合わせてという形になります。
なかなかこうするといいっていう決まったものはないんじゃないかなと思いますけど。

Dr.大友 
ハグした方がいいとか。
手をつないだ方がいいとか。
患者さんの家族同士はハグしたりしないんですか。

Dr.川村 
患者さんの家族同士ハグしてらっしゃるの直接見かけることは少ないですけど。でもあるでしょうね。

Dr.大友
そうですよね。

来年から川村病院も緩和ケアをなさるという話でした。数少ない静岡県の緩和ケア病棟を持つ病院になると思うんですが、 何か抱負とかありますか?

Dr.川村 
そうですね。
今は在宅も段々普及していますけども、在宅がいいとか病院がいいとかではなくて一つの選択肢として、終末期の患者さんが自分らしく過ごせる場所が提供できればいいかなと思っています。

Dr.大友
幸ハウスのようなキャンサーケアリングハウスの運営に加えて、病院では診断、手術から緩和ケアまでと先生もお忙しいですね。

Dr.川村 
そうですね。でもやりがいのある仕事なので頑張っていきたいと思います。

Dr.大友
今日はありがとうございました。

Dr.川村 
ありがとうございました。

 

大友博之 渋谷セントラルクリニック エグゼクティブ ディレクター

日本抗加齢医学会専門医、日本麻酔科学会専門医、日本医師会認定産業医、国際抗加齢医学会専門医(WOSAAM)

免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、再生医療、運動療法を取り入れた新しい統合医療をベースにした診療で著名人にもファンが多い。最先端の西洋医学に通じている一方で、「鍼治療の魔術師」と呼ばれるほど鍼治療の名手で東洋医学にも造詣が深い。

またワインと健康食の愛好家しても名高く、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュのワイン騎士団から名誉ある「シュバリエ」を叙任されているほか、料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有する美食家が集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会の「オフィシエ」でもある。

川村雅彦 川村病院副院長
日本外科学会 専門医、日本消化器外科学会 専門医指導医、日本消化器内視鏡学会専門医指導医、日本消化器病学会 専門医、消化器がん治療認定医、日本乳がん学会 認定医、日本医師会認定産業医

‘診断から治療、看取りまで’をモットーにどんな時も患者さんの心に寄り添える医師を心がけています。

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