気血のめぐりをコントロールする「カツオ(鰹)」
カツオはマグロと同じサバ科に属します。
カツオは成魚では30℃以上、若いカツオでは22℃以上に保たないと正常な遊泳行動がとれません。そこで、体内の血合筋部に動脈と静脈が密に接する特殊な熱交換機能を備えることで、エラで冷却した血液を暖めてから体内に送り込み、外界水温より高い体温を維持しています。そのため水温15℃の北の海にまで回遊することができます。
カツオの旬は年に2回あり、1回目は4月〜5月頃、2回目は8月〜9月頃です。
九州地方から本州に進んでくる1回目の「初カツオ」、水温が低下する秋に三陸沖から九州南部に向かって南下する2回目の「戻りカツオ」と呼び方が変わり、味わいや栄養が異なります。初カツオは、しっかりとした赤色の身を持ち、さっぱりとした味わいです。一方、戻りカツオは脂がのっていて濃厚な味わいのためトロカツオと呼ばれます。
江戸時代では「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」と俳人・山口素堂が詠んだ句が有名になり、江戸っ子にとって初夏に初カツオを食べることが粋と言われていました。
日本は世界のカツオの約10分の1を食べている、世界有数のカツオ消費大国です。
栄養素
カツオはタンパク質と鉄分が豊富です。さらに、血液をサラサラにしてくれる不飽和脂肪酸のEPA、DHAも豊富です。特に、戻りカツオは脂がのっているのでEPA、DHAが豊富です。カツオ100g中に含まれるカリウムは430mg、この量は魚類の中でトップクラスです。
その他にもビタミンD、鉄分、タウリンなどの栄養素が豊富なことからエネルギーをつくり出し、疲労回復を助けます。季節の変わり目に起こる体調不良のときにおすすめの食材です。
東洋医学では、胃腸を丈夫にして気血の不足を補い、体力の回復、目に影響するといわれる肝と脾の機能を助ける働きがあります。
カツオの栄養成分(可食部 100g あたり)
初カツオ
・エネルギー ・・・108kcal
・タンパク質 ・・・25.8g
・脂質 ・・・0.5g
・炭水化物 ・・・0.1g
・鉄 ・・・1.9mg
・カルシウム ・・・11mg
・ビタミンD ・・・4.0μg
・ビタミンB12 ・・・8.4μg
・DHA ・・・120mg
・EPA ・・・39mg
戻りカツオ
・エネルギー ・・・150kcal
・タンパク質 ・・・25.0g
・脂質 ・・・6.2g
・炭水化物 ・・・0.2g
・鉄 ・・・1.9mg
・カルシウム ・・・8mg
・ビタミンD ・・・9.0μg
・ビタミンB12 ・・・8.6μg
・DHA ・・・970mg
・EPA ・・・400mg
効能・効果
◆タンパク質
カツオ100g中には25.8gのタンパク質が含まれています。カツオの体は水分が7割強を占めているので、残り部分のほとんどがタンパク質です。タンパク質が不足すると筋力が低下するだけでなく免疫機能の低下にも繋がります。
◆カリウム
カリウムはミネラルの一種で、ナトリウム(塩分)を排出する働きがあるため、高血圧予防に役立つ栄養素です。また、神経や筋肉の働きにも関わっているため、カリウムが不足すると脱力感や不整脈を引き起こすことがあります。
また、カリウムは水に溶けやすい性質があるので、お刺身として食べると良いです
◆DHA・EPA
DHAとEPAは魚に含まれる必須脂肪酸で、人間のからだでは作られないため、食事から摂取する必要があります。DHAは主に脳や神経、EPAは血管や血液の健康維持に関わると言われています。
◆鉄
鉄はヘム鉄と非ヘム鉄に分けられますが、カツオには吸収率の高いヘム鉄が含まれています。鉄は赤血球の材料になり全身に酸素を運ぶため、とても重要なミネラルです。
◆ビタミンD
ビタミンDは、カルシウムの吸収をよくする働きがあります。体内で生成されるビタミンDには限りがあるため、食事により補う必要がある栄養素のひとつです。
◆ビタミンB群
カツオにはビタミンB群の一種で血液を作るビタミンB12と皮膚や粘膜を維持するナイアシンが多く含まれています。ビタミンB群は全部で8種類あり、それぞれに主な働きがあるものの、単体で作用するのではなく、お互いに助け合いながら働いています。ビタミンB群は食べ物からエネルギーを作り出すエネルギー代謝に欠かせない栄養素です。
東洋医学的側面
・寒熱:平(体を温めも冷やしもしない)
・昇降・収散・潤燥:昇(気や熱を上昇させる)、収(気を体の内に収める作用)
・臓腑:腎・脾
・五味:甘(補い滋養する作用)
・毒性:なし
腎を温め、精気を補益する
気血を補う
冷え、足腰のだるさ、めまい、耳鳴り、食欲不振
体内の余分な水湿を排泄させ、脾を正常に働かせる
栄養素を上手に摂るための保存方法と調理方法
新鮮なカツオ(切身)の選び方は、血合いが朱色で鮮やかな色で肉と皮の間に脂肪があり、ピンク色に近いものが鮮度が高いです。脂肪が多いと鮮度が早く落ちて、生臭さくなってしまうので気をつけましょう。
血合いのない場合は、鮮やかな赤色で透き通っているものを選びましょう。切り口が虹色に光っているものは鮮度が落ちているため注意してください。
生食では体が冷えやすくなるので、お刺身には生姜やネギなどの薬味をたっぷりつけて食べましょう。また、加熱したほうが消化がよくなるので、体力が落ちているときはお刺身ではなく加熱した料理をおすすめします。