③ 潰瘍性大腸炎はどのような症状で気がつくのか
Dr.大友 (渋谷セントラルクリニック総院長)
教科書的には潰瘍性大腸炎というのは免疫のご病気ですよね。
免疫が絡む病気というのは色々な合併症をきたしやすいと医学部では習ったわけなんですが、今でもそういう概念で間違いないでしょうか。
Dr.菰池 (たまちホームクリニック院長)
間違いないですね。
もちろん皆さんが必ず合併症が起きるとわけではないのですけれども、可能性の一つとしてぶどう膜炎といって目に炎症が起きてしまう、あるいは口内炎といって口の中に炎症を起こしてしまうことがあります。
他には皮膚の合併症。有名なのは足の下腿部にできます。
Dr.大友
脛(すね)。
Dr.菰池
脛。膝より下の脛の辺りに出来やすいのは有名ですね。
Dr.大友
例えばどっちが症状先なんですか。先に大腸というか、直腸の症状が先に出るんですか。
Dr.菰池
実はそうではないといわれています。
目の症状から気付いて潰瘍性大腸炎というように診断される方も中にはいらっしゃいます。
Dr.大友
なるほど。
通常はお腹が痛くて、ちょっとゼリー状の下痢が出ていて、しかも血が混じっていたらなんか相当な病気になってるのではないかと心配になりそうですけど。
患者さんはすぐにそうやって病院に来るもんじゃないんですか。
Dr.菰池
やっぱり10代、20代、30代の方はお忙しい方が多くて学生さんだったり、社会人でも経験がまだ浅い、つまり仕事がまだまだお忙しい方が多いのですね。だから自己判断でたぶん痔だろうと経過観察する人もいます。
Dr.大友
痔!
Dr.菰池
よほどお腹が痛かったら別ですけども、血便が出るぐらいであれば様子を見るかもしれません。昔から痔があったよって言うので自己診断してしまって発見が遅れてしまうことは多々あります。
Dr.大友
10代、20代、30代に始まりやすい病気だから、最初にそういう症状が出たらやはり恥ずかしい感じもありますよね。
Dr.菰池
女性の方は血便、血のついたうんちということで病院で相談しづらいと思いますね。
Dr.大友
でもやっぱり続くようであればそこは早く病院に行って診断してもらわないといけないんですよね。
Dr.菰池
その方がいいと思います。潰瘍性大腸炎は若い方に多い病気とお伝えしました。
最初に申し上げ忘れましたけど、この病気というのは完治することはないのです。ちょっと言葉が非常に難しいんですけども完治はしない。
Dr.大友
完全に治ることはない。
Dr.菰池
寛解状態と言って、良い状態、症状がない状態をキープすることはできるんですけども、例えば盲腸の手術をして完治しましたという風にはいかないのです。
Dr.大友
取ったからっておしまいってわけには。
Dr.菰池
いかないんですね。
そう言う意味では潰瘍性大腸炎と長いお付き合いをしなきゃいけない。そういう意味では若い時に発症してしまうと、その炎症をずっと長年持ったまま暮らすわけですね。
ちょっとドキッとする言葉が出てしまいますけども、大腸炎というところから大腸がんを発症してしまうことがあります。
Dr.大友
潰瘍性大腸炎がコントロールされない状況で長い間続いていくと、がんになってしまう可能性もあるということですね。
Dr.菰池
そうですね。
Dr.大友
見つけやすいものなんですか。
Dr.菰池
良いご質問いただきました。
これが非常に見つけにくいのです。通常は潰瘍性大腸炎になった方は1年に1回目もしくは2年に1回くらい大腸の内視鏡検査をお薦めをするんですね。
大腸がんは基本的には内視鏡の検査をしないと見つからないですし、潰瘍性大腸炎に合併する大腸がんは内視鏡の検査をしていただいても見つからないこともあるぐらい見つけることが難しいんですね。
Dr.大友
タイプが違うから?
Dr.菰池
そうなんです。
一般的に大腸がんて聞かれたことがあると思いますけども、大腸ポリープというポリープが原因でポリープが徐々に徐々に大きく育ってきて大腸がんになります、っていうのが一般的な大腸がんなんですけども、この潰瘍性大腸炎に合併する大腸がんていうのは、ポリープを経ないで、粘膜が炎症を起こしてしまってなります。
イメージで言うと焼け野原みたいな感じで、荒れた野原。
Dr.大友
はい。
Dr.菰池
そこに遺伝子の変異みたいなのが起きてしまってがんができてくるのですね。
Dr.大友
だからボコッとしないんだ。
Dr.菰池
ボコッとしないんですよ。
Dr.大友
ポリープみたいにならない。
Dr.菰池
なので内視鏡見落とすと言い方はちょっと違うかもしれないけど、そういう目でよくよく見てないとがんが発見できない。
Dr.大友
内視鏡が上手な先生とか潰瘍性大腸炎みたいな疾患を良く見慣れているような先生に診てもらわないといけないと言うことです。
逆に研修医でもポリープならわかりますものね。
Dr.菰池
うん。
Dr.大友
そういう感じではない。
Dr.菰池
ではないんですよ。
Dr.大友
それだと長いお付き合い、潰瘍性大腸炎を良くコントロールすることがまず最初のスタートですね。
Dr.菰池
そうですね。
もちろん炎症がない状態をキープしている方ががんにもなりにくいので、がんになっちゃうってことを心配されるよりも、まず日々の炎症をしっかり抑えてあげて専門医の先生に然るべきこう治療を相談されるほうがいいと思いますね。
Dr.大友
話は変わりますけど、免疫と言うと関節とかに症状がでやすいこともありそうですけど。関節炎は起きたりしないですか。
Dr.菰池
起きたりしますね。この病気は自己免疫性疾患なので。
Dr.大友
関節リウマチとか同じなんですよね。
Dr.菰池
そういう仲間なんですね。
リウマチと言うのはご自分の免疫が関節を攻撃する病気ですけども、この病気はご自分の免疫が大腸の粘膜を攻撃する病気です。
大腸と関節と似て非なる病気ですけども、似てるものもありますから関節が痛くなる方もやっぱり一定の確率でいらっしゃいます。
Dr.大友
それは炎症物質と言われている、TNFαみたいな臓器を傷つけるような物質が出ているからですか?
そのため弱い部位というか、症状が出やすい部位があるとそこに症状が出てしまうという見解でよろしいですか。
Dr.菰池
そうですね。
TNFαという言葉がでました。おっしゃる通り、炎症を起こす物質が関与してる病気ですので、関節とか腸とか口の中の粘膜とか目とかそういう弱いところに炎症が起きてしまうということになりますね。
Dr.大友
なるほど。非常に勉強になりました。
ありがとうございました。
大友博之 渋谷セントラルクリニック エグゼクティブ ディレクター
日本抗加齢医学会専門医、日本麻酔科学会専門医、日本医師会認定産業医、国際抗加齢医学会専門医(WOSAAM)
免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、再生医療、運動療法を取り入れた新しい統合医療をベースにした診療で著名人にもファンが多い。最先端の西洋医学に通じている一方で、「鍼治療の魔術師」と呼ばれるほど鍼治療の名手で東洋医学にも造詣が深い。
またワインと健康食の愛好家しても名高く、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュのワイン騎士団から名誉ある「シュバリエ」を叙任されているほか、料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有する美食家が集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会の「オフィシエ」でもある。
日本内科学会認定医、日本消化器病学会認定消化器病専門医、日本消化管学会認定指導医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本ヘリコバクターピロリ学会認定感染症認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本カプセル内視鏡学会認定医、日本医師会認定産業医