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母親がトランス脂肪酸をたくさん摂取すると赤ちゃんの発育は遅れる?

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編集部W
先日の水銀と赤ちゃんの発育の問題の記事は大きな反響がありました。そこで早速トランス脂肪酸と赤ちゃんの発育について知りたいというlineを頂いております。

Dr.大友 (イシペディア編集長)
過去にもトランス脂肪酸の記事を取り上げてきましたが、確かに反響が多かったですね。やはりトランス脂肪酸が含まれている食品を摂取すると健康に影響を及ぼすことがよく知られるようになってきたからではないでしょうか?

編集部W
確かアメリカではトランス脂肪酸が禁止されましたよね?

Dr.大友
その通りです。アメリカでは2018年6月にトランス脂肪酸を含む水素添加油脂の食品使用について全廃となりました。これはトランス脂肪酸を摂ることで細胞膜の質が劣化し様々な健康トラブルを引き起こすことが知られるようになったためです。

編集部W
例えばどのような健康被害が考えられているのですか?

Dr.大友
アメリカでは心臓疾患で亡くなられることが多いので、トランス脂肪酸を控えようとしている動きの中にはそういった理由があります。実際に、トランス脂肪酸は心疾患の原因とされているため、FDA(米食品医薬品局)では「トランス脂肪酸の摂取を控えることで、年間7,000人の死者を減らし、2万件の心臓発作を予防する」と発表しました。

編集部W
2万件もの心臓発作を予防するのはすごいです。日本ではどのような扱いになっているのでしょうか?
イシペディアでも記事にしたことがありますが、2019年現在まだ規制がありませんよね?

Dr.大友
その通りです。アメリカ全土で禁止されたトランス脂肪酸ですが、残念なことに日本ではまだ規定や定めがありません。トランス脂肪酸がアメリカほど普及していないからというのが理由の一つです。

編集部W
トランス脂肪酸に関する世界的な規制の流れはどうなっているのですか?

Dr.大友
トランス脂肪酸に規制を行っているのはアメリカだけではありません。デンマークでは2004年から特定の食品に含まれる人工トランス脂肪酸について規制をかけてきました。世界保健機関(WHO)はトランス脂肪酸の削減目標を定め2023年には世界から全廃しようと計画しています。

編集部W
それは日本の政治家の方にも萌えてほしい問題ですね。
トランス脂肪酸が心臓には良くないということはよくわかりました。さて今日の問題はトランス脂肪酸と生まれてくる赤ちゃんの関係についてお伺いさせてください。

Dr.大友
お母さんの血中のトランス脂肪酸は胎盤を通過して赤ちゃんに移行するため、胎児へ与える影響は以前から危惧されてきました。

編集部W
具体的にはどのような影響が取り沙汰されているのですか?

Dr.大友
例えばノルウェーの研究ではトランス脂肪酸量と未熟児の出生体重との間に逆の相関関係を明らかにしています。つまりトランス脂肪酸の多い赤ちゃんは出生時の体重が少なかったということです。

編集部W
生まれてくる赤ちゃんの体重が低くて新生児 ICU(NICU)に入ることになったりしますね。

Dr.大友
他にもアメリカの研究報告では、排卵障害による不妊への影響、妊娠中のトランス脂肪酸の多量摂取による流産や死産への影響、子どもの喘息の発症への影響が報告されています。

編集部W
妊娠中にトランス脂肪酸を摂ることによって、生まれた後の赤ちゃんの喘息にも関係するのですね。

Dr.大友
そうした可能性が指摘されています。こうしたことはトランス脂肪酸を含んでいる食品をお母さんが多く食べれば食べるほど母体や胎児に影響を与えることを意味しています。

編集部W
結果として赤ちゃんの発育は遅れる可能性があるということですね。ところで、トランス脂肪酸はどのような食品に含まれているのでしょうか?

Dr.大友
人工のトランス脂肪酸は植物油や固形化する際の水素添加と呼ばれる製造工程で生成されます。こうした水素を添加された油脂はショートニングやマーガリン、コーヒー用のクリームなどに含まれて、揚げ物、パン、焼き菓子などの製造に使われます。外食や加工食品ではトランス脂肪酸の高リスク食品が非常に多くなっているが実情です。

編集部W
トランス脂肪酸が含まれているかどうかは、パッケージからでは分かりにくいですね。

Dr.大友
本当はそうしたことに対する表示義務ができるのが一番理想なのでしょうけれど。現在はトランス脂肪酸を 「買わない」「食べない」という選択ができるように、トランス脂肪酸がどのような食品に含まれるかを日ごろからきちんと把握しておくことが大切だと思います。

編集部W
ありがとうございました。

 

〔大友“ピエール” 博之〕

日本のみならずロサンゼルス、フランクフルト、香港、バンコクに拠点を持ち、個別化医療(precision medicine)を実践している。免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、運動療法を取り入れた治療で定評がある。

・ 医師 日本抗加齢医学会専門医 / 欧州抗加齢医学会専門医 / 日本麻酔科学会専門医
・ 西洋薬膳研究家、シェフドクターピエールとしても活躍中
渋谷セントラルクリニック代表
・ 一般財団法人 日本いたみ財団 教育委員
・ 一般社団法人食の拠点推進機構 評価認証委員/食のプロフェッショナル委員

・ 料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有するシェフなどが集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会のオフィシエ
・ ワインにも造詣が深く、フランスの主要産地から名誉ある騎士号を叙任している。
 シャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ / ボルドーワイン騎士団 コマンドリー /ブルゴーニュワイン騎士団 シュヴァリエ     

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