懐かしのフリッタータ
僕は21世紀になる前のイタリアを旅していた。
まだリラが通じたユーロになる前のイタリアは、今よりも人情味があふれた街だった。
1日7000円で旅する質素な旅、お金が足りなかった僕をアグリツーリズモをしていたイタリアのマンマは格安で受け入れてくれた。
医大生の冬休みは短い。
1週間にも満たない短い期間だったけど、精一杯農作業したり、お料理を教えてもらったりの夢のような日々だった。
今日お披露目するのはトスカーナの農家で教えてもらった僕にとってスペシャルなお料理。
マンマのオムレツは、野菜をみじん切りにして卵で蒸し焼きにしたような料理だった。
僕が日本で食べていたオムレツとは全く違くて、スペインのトルティージャとも違うふわふわのオムレツ。
それをフリッタータと呼ぶということをその時初めて知った。
今日はそんな昔を思い出して、患者さんに分けていただいた無農薬のカブとブロッコリーと卵で懐かしのフリッタータを作ってみた。
あの後何度もトスカーナを旅したけど、未だに出会うことが叶わないあの味をご紹介します。
1. ブロッコリー、カブは小さめのサイコロ大の大きさにぶつ切りして、少量のオリーブオイルとお塩少々で低温でゆっくり火にかける。
2. その間にボールに卵をたっぷり用意する。
3. カブの周りが白くなるまでに火にかけたら、卵の入ったボールに合わせる。その際にオリーブを叩いて一緒に入れてあげるのがマンマ流。それで塩味と油を補給するんだ。
4. 一体感が出るまでゆっくりかき混ぜる。
5. その後はフライパンに具と卵を流し入れ、ひたすらゆっくりかき混ぜる。その際にオリーブオイルを入れないのがマンマのやり方。
6. スクランブルエッグ位の硬さになったところで、火を弱めにして蓋をして蒸し焼きにする。
7. 途中周りをヘラで離してあげて、中身がお気に入りの硬さになったところで完成。
医学的観点からお料理の解説
本場のレシピにはパルミジャーノチーズを入れることがあるけど、オリーブの塩分とうま味を足すことによってあっさりとした食感に。
僕は乳糖不耐症なのでチーズは極力避けたいのもあるんだけどね。
カブ、カブの茎、ブロッコリーが入っているので、水溶性食物繊維も不溶性食物繊維も豊富。もちろんアミノ酸が完璧に含まれている卵を使っているから栄養価も高い。
調理のポイントはたまごにいるサルモネラ菌に気を付けること。お野菜を切るまな板と卵を一緒に調理するとサルモネラの感染のリスクがあるので要注意です。
ちょっと問題があるとしたら、表面におこげが出来てしまうこと。これはAGEsと呼ばれる糖化ストレスを引き起こしてしまう物質。
おこげ自体は美味しいけど、体には必ずしも良くない、体も焦がしてしまうことは知っておいて欲しい。
家のどこかにある、あの時の写真に映るマンマに捧ぐフリッタータ。
〔大友“ピエール” 博之〕
日本のみならずロサンゼルス、フランクフルト、香港、バンコクに拠点を持ち、個別化医療(precision medicine)を実践している。免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、運動療法を取り入れた治療で定評がある。
・ 医師 日本抗加齢医学会専門医 / 欧州抗加齢医学会専門医 / 日本麻酔科学会専門医
・ 西洋薬膳研究家、シェフドクターピエールとしても活躍中
・ 渋谷セントラルクリニック代表
・ 一般財団法人 日本いたみ財団 教育委員
・ 料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有するシェフなどが集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会のオフィシエ
・ ワインにも造詣が深く、フランスの主要産地から名誉ある騎士号を叙任している。
シャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ / ボルドーワイン騎士団 コマンドリー /ブルゴーニュワイン騎士団 シュヴァリエ