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喫煙男性の肺がんリスク、ビタミンBサプリの多量摂取で上昇か

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Forbes Japan 2017/09/01 David DiSalvo , CONTRIBUTOR

ビタミンB6ビタミンB12のサプリメントを長期にわたって多量に摂取した場合、男性の肺がんリスクが高まる傾向があることが分かった。特に喫煙習慣のある男性の場合、発症リスクはビタミン剤を取っていなかった人たちに比べ、2~4倍ほど上昇していたという。

米科学雑誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(Journal of Clinical Oncology)」に先ごろ掲載された論文は、米国に住む年齢56~70歳の7万7000人以上の過去10年のビタミンBサプリメント摂取についてのデータを収集、分析結果をまとめたもの。
調査対象は、米国立衛生研究所(NIH)が実施しているサプリメントに関するコホート調査(長期にわたる観察研究)、「ビタミン・アンド・ライフスタイル(Vitamins and Lifestyle、VITAL) 」の参加者だ。VITALは、ビタミンとミネラルのサプリメント摂取とがん発症リスクの関連性を明らかにする目的で行われている。
分析の結果、肺がん発症リスクが最も高かったのは、10年にわたりビタミンB6を1日当たり20mg以上、またはビタミンB12を同55マイクログラム摂取していた男性喫煙者だったということが分かった。喫煙習慣がある男性の発症リスクはビタミンのサプリメントを取っていなかった人たちに比べ、ビタミンB6を摂取していた場合は3倍、ビタミンB12を摂取していた場合は4倍に高まっていた。
また、非喫煙の男性が肺がんを発症する危険性は、これらのサプリメントを取っていなかった人の2倍だった。女性の肺がんリスクとこれらのサプリメント摂取の関連性は、確認されなかった。
調査では、対象者の年齢や人種、学歴、アルコール摂取量、体格指数、肺がんの家族歴など、結果に影響を与える可能性があるさまざまな要因についても考慮した。それらの要因を含めた分析結果でも、全体の傾向として見られる結果に変化はなかった。

結果をまとめた論文の主著者は発表文で、「データが示すのは、喫煙習慣がある男性が長期間にわたって多量のビタミンB6とB12を摂取し続けた場合、肺がん発症率が高まるということだ。懸念すべき結果であり、今後さらなる調査が必要だ」と述べている。
NIHが推奨するビタミンB6の摂取量は、19~50歳の場合は男女ともに1日当たり1.3ミリグラム。51歳以上の場合、男性は同1.7ミリグラム、女性は同1.3 ミリグラムとされている。また、ビタミンB12の推奨摂取量は、14歳以上の男女ともに同2.4マイクログラムとされている。今回の調査で明らかになった肺がん発症の危険性を高める摂取量は、NIHの推奨量を大幅に上回っていた。
過去にはビタミンBサプリメントと肺がん発症の関連性について、喫煙習慣の有無にかかわらずリスクを低下させる可能性があるとの研究結果が報告されていた。だが、今回の調査よりも相当に小規模の調査だった。
一方、今回発表された結果については、観察研究の結果であり(この手法を用いた全ての結果と同様)、判明したのは因果関係を証明するものではなく、相関関係を示すものだという点に注意が必要だ。より多くの参加者を対象とした大規模な調査が現在、引き続き行われている。

【DR大友の見解】

オリンピックなどで社会的にも注目が集まっている喫煙問題。

医学的に面白い報告が出てきましたのでご紹介。

これまで多くの研究では喫煙はビタミンBビタミンCビタミンDの血液中の濃度が下がるという報告が多く認められてきたこともあって、ビタミンBの低下、特にB12や葉酸が不足することによる狭心症、脳卒中などの血管障害が引き起こされることが心配されてきていたわけですが。。

むしろビタミンBを摂取すると肺がんになる可能性が高いとは驚きの報告です。

喫煙される全ての方が肺がんになるわけではないので、何でお亡くなりになるのか死因についても考える必要があると思います。つまり肺がんでなくなるのか、心筋梗塞や脳卒中にになる確率、死亡者数を考慮しないと一概にビタミンBが悪いとは言えないと思います。

ビタミンBサプリに含まれている賦形剤(固まらせる粉)の影響も気になるところです。

個人的には禁煙を薦めたいと思いますが、どうしても難しい人は遺伝子検査などを積極的に活用するのが良いと思います。肺がんの検査のためにCTなどで被ばくのリスクを高めるだけでしょうし。

遺伝子検査をしないまでも、検診などを見ると白血球の数が多い人は免疫系に影響が出ている可能性があるので要注意だと思います。

そして何よりも有酸素運動で心肺機能を高めることが喫煙者にも非喫煙者にとっても重要だと考えます。

 

〔大友“ピエール” 博之〕

日本のみならずロサンゼルス、フランクフルト、香港、バンコクに拠点を持ち、個別化医療(precision medicine)を実践している。免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、運動療法を取り入れた治療で定評がある。

・ 医師 日本抗加齢医学会専門医 / 欧州抗加齢医学会専門医 / 日本麻酔科学会専門医
・ 西洋薬膳研究家、シェフドクターピエールとしても活躍中
 渋谷セントラルクリニック代表
 一般財団法人 日本いたみ財団 教育委員

・ 料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有するシェフなどが集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会のオフィシエ
・ ワインにも造詣が深く、フランスの主要産地から名誉ある騎士号を叙任している。
 シャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ / ボルドーワイン騎士団 コマンドリー /ブルゴーニュワイン騎士団 シュヴァリエ 

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