肥満関連遺伝子多型 ひまんかんれんいでんしたがた

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「肥満遺伝子」という言葉を耳にしたことのある人は少なくないでしょう。そもそもヒトに、太りやすくなる=健康に良くない肥満遺伝子が組み込まれているのはなぜでしょうか。

現代は飽食の時代と言われます。今の日本では、よほどの状況(山で遭難、大災害で食料物資が届かないなど)でない限り、飢えによって死ぬのは非常にレアケースと言えます。けれども人類の長い歴史から見れば、食べたいものを食べたいだけ(あるいは必要以上に)食べられるようになったのは、ごくごく最近のことです。飢饉や大災害、戦争など、様々な原因から常に飢えとの闘いだった人類は、食べ物にありつけたときは可能な限り脂肪として体内に蓄えて、いざ食べ物がなくなったとき少しずつその脂肪を消費して生き延びる必要がありました。

さらに、エネルギー消費を最小限に抑えて、蓄えた脂肪をできるだけ長持ちできるように基礎代謝(内臓の活動や呼吸、体温維持など生命維持のために必要最低限必要なエネルギー)をなるべく低くしました。車で言えば、燃費のいいエンジンのような体の仕組みや器官を作ったのが、今「肥満遺伝子」と呼ばれるいくつかの遺伝子です。

肥満遺伝子は、現在までに50以上の関連遺伝子が発見されています。代表的なものとしては、以下のようなものがあります。遺伝子多型のタイプごとに、肥満にならないための食事の注意点と一緒に紹介します。

◆β3アドレナリン受容体 β3AR
脂肪細胞などにある物質で、アドレナリンと結合し脂肪細胞に蓄えられていた中性脂肪を分解し燃焼されやすい状態にする働きがあります。この遺伝子に異常があると、中性脂肪が分解されにくく内臓脂肪がつきやすくなりますが、日本人の3分の1がこの異常を持っているといわれ、異常がない人に比べると基礎代謝が1日200kcalほど低いといわれています。このタイプの人は、糖質を分解するインスリンの分泌が低く、糖質で太りやすくなります。糖質を含む主食類(炭水化物)や、甘いものの摂り方・量に気を配り、糖質の燃焼を促進するビタミンB1を多く含むレバーや豚肉、かつおなどの食品を積極的に摂取するとよいでしょう。

◆脱共役たんぱく質1 UCP1
日本人の25%が異常のある遺伝子を持つという脱共役たんぱく質1。この異常があると皮下脂肪がつきやすくなり、洋ナシ型肥満になりやすいのが特徴です。基礎代謝は異常のない人より100kcalほど低く、脂質の代謝が苦手で痩せにくく太りやすい体質と言えます。脂質の代謝が悪いので、脂肪を摂りすぎないことが肥満を防ぐ大きなポイントとなります。脂質の代謝をサポートするビタミンB2が多く含まれている小松菜や乳製品、卵、青魚などを意識して摂りましょう。

◆β2アドレナリン受容体遺伝子 β2AR
日本人の16%のひとがこの遺伝子の異常を持つといわれています。ほっそりとした体形の人が多いのですが、筋肉がつきにくく、たとえトレーニングで筋肉量を増やしてもすぐに落ちてしまいます。若いころは比較的痩せているので、一見肥満遺伝子ではないように思われがちですが、加齢によって基礎代謝が下がると、身体全体に脂肪が乗り、一度太ると痩せるのが難しくなってくるため注意が必要です。

筋肉はエネルギーを大量に消費する器官です。まずは筋肉量を増やすために筋肉の材料となる良質なたんぱく質をたくさん摂り、筋肉の合成を補助するビタミンCが豊富に含まれている野菜や果物、海藻などを積極的に食べるように心がけるとよいでしょう。自分がどのような肥満関連遺伝子多型を持っているかを知れば、ひたすら食事量を制限したり、やみくもに運動するよりも効果的にダイエットすることができるというわけです。

なお、肥満関連遺伝子にまったく異常がない人は、日本人のうち5%ほどといわれます。体重管理もしやすく基礎代謝も標準なため、通常の生活をしていれば肥満に過度に悩むことはないと思われますが、体重コントロールの必要があると感じた場合には、バランスの取れた食生活と、運動習慣をつけることで筋肉量を増やし、基礎代謝をアップさせると効果的です。

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