パントテン酸 ぱんとてんさん

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

パントテン酸とは

パントテン酸は水溶性ビタミンのひとつです。英語で「いたるところに存在する酸」という意味で、その名の通り様々な食品中に存在します。

体内では腸内細菌によって生成されているため通常の食生活を送る上でパントテン酸が不足することはあまりありませんが、我々の体の中でとても重要な働きをしてくれています。

体の中でパントテン酸の大半は補酵素型のコエンザイムA (CoA)の誘導体であるアセチルCoAやアシルCoAとして存在しています。

パントテン酸を含む食品

パントテン酸を多く含む食品は鶏レバー10.10mg、豚レバー7.19mg、卵黄4.33mg、生のたらこ3.68mg、納豆3.60mg(いずれも可食部100g当たり)があります。パントテン酸欠乏症を実験で再現することはできないため、推定平均必要量を設定できないため、食事調査の値をもとに一日の目安量が定められています。一日の目安量は年齢により少し前後しますが成人男性で約5mg、成人女性で約4mg、妊婦、授乳婦で5mgです。

パントテン酸の体内での働き

パントテン酸はビタミンB5とも呼ばれ、システアミン、アデノシンと結合しコエンザイムA(CoA)として糖、脂質、アミノ酸の代謝(TCA回路)に深くかかわっています。糖代謝ではCoAとピルビン酸からアセチルCoAができ、これがTCAサイクルに入ります。脂肪代謝では脂肪の燃焼(β酸化)によってCoAと脂肪酸の複合体からアセチルCoAができ、またTCAサイクルにはいります。また、パントテン酸は140以上の酵素の補酵素として働き、酵素が体の中で働く上でその助けとなり、様々な代謝やステロイドホルモンの合成などを維持する働きも担っています。

多くの食品中に含まれているパントテン酸は通常の食生活で不足する事はありませんが、過度なダイエットや抗生物質の多用により欠乏した状態になるとエネルギー代謝と脂質合成に影響を及ぼします。エネルギー産生が滞るだけでなく、体内に脂肪がたまりやすくなります。欠乏症状としては免疫力の低下、ストレス耐性の低下、動脈硬化、成長障害、体重減少、皮膚炎、毛髪の不健康、足の異常感覚、倦怠感、不眠、めまい、うつ状態などがみられます。パントテン酸は水溶性ビタミンであるため過剰に摂取しても尿中に排泄されるのでパントテン酸のみの過剰症についてはいまのところ報告はありませんが、過去にパントテン酸カルシウムと同時に、ニコチンアミド、アスコルビン酸、ピリドキシンを大量に3ヶ月間にわたり投与する実験中、一部の人で吐き気や食欲不振、腹部の痛みがみられたため実験を途中でやめた記録が残っています。

パントテン酸は血液や細胞内にある余分なコレステロールを回収する善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールの生成を促す働きもあります。

コレステロールから作られる副腎皮質ホルモンの合成に関わり、ストレス耐性を整える働きがあります。副腎皮質ホルモンはストレスや侵襲など、さまざまな影響によって副腎皮質より分泌されます。炎症の抑制や炭水化物の代謝、たんぱく質の異化、血液の電解質濃度の調節、免疫機能などの生理作用に深くかかわっています。

関連するカテゴリ

関連する記事はこちら