摂食調節と肥満 せっしょくちょうせつとひまん

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近年、肥満が原因の生活習慣病が増加しており、大きな社会問題となっています。肥満を解消するためには食事の量を減らさなければなりませんが、そのために、摂食の調節にかかわる多くの研究がなされています。

近年、食欲を抑制するホルモンであるレプチンの働きを阻害するPTPRJという酵素が存在することが明らかにされました。レプチンは、脂肪細胞から分泌されますので、肥満になって脂肪が増えると、レプチンの分泌量が増加して食欲を抑制し、体重が増加するのを抑えてくれるはずです。しかし、実際には、肥満の人は標準的な体重の人よりもレプチンの働きが弱く、食欲が抑えられずに食べる量も減らず、より体重が増えるという悪循環を繰り返してしまいます。基礎生物学研究所・統合神経生物学研究部門の新谷隆史准教授らの研究グループは、その原因として、肥満の人は、摂食中枢でレプチンの作用を阻害するPTPRJ酵素の量が増えることを明らかにしました。さらに、PTPRJがインスリンのもつ、血糖値を下げる効果も抑制していることも明らかにしました。以上の結果から、PTPRJの働きを抑える阻害剤ができれば、レプチンやインスリンが食欲を抑えたり血糖値を下げたりする働きを高めることができ、肥満や糖尿病を改善できるのではないかと期待されています。

また、そのほかにも実際に、抗肥満薬として、食欲を増進させるニューロペプチドYやメラニン凝集ホルモンの働きを抑える薬や、食欲を抑制するホルモンであるコレシストキニンと同様の働きをする薬などの開発も進められています。

さまざまな研究がすすめられ、新しい肥満薬の開発も進められていますが、最も簡単にできる食べ過ぎを防ぐ方法は、ゆっくりとよく噛んで食べることです。レプチンが脳の満腹中枢に作用するまでには、20分~30分程の時間がかかるので、早く食べると、満腹中枢が刺激されて満腹感を感じる前にたくさんの量を食べることになります。ゆっくり食べることで、食べ過ぎる前に満腹感を感じることができるようになり、食べ過ぎによる肥満を防ぐことができるのです。

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