「アルコールは毒か?」という問いに対する医学的考察

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アント兄弟のワインと寄り添うFAMのペアリング設計

赤坂のワインレストラン「FAM」にて、ブルゴーニュ白ワインの頂点の一つとされるアント兄弟のワインを、アルノー・アント氏の息子であるルイ・アント氏と共に囲む会を開催いたしました。

世界的に入手が困難といわれるアント兄弟のワインと、自らがシェフを務めるレストランFAMでコラボレーションが実現したことを、大変光栄に感じております。

近年の温暖化の影響により、ブルゴーニュの白ワインは肉厚でアルコール度数の高いスタイルに変化しつつありますが、今回のアント兄弟のワインは、デキャンタから2時間が経過しても、背筋が伸びるような純粋なミネラルと、エレガンスの極みにある酸を保っていました。

今回のコラボレーションにあたり、私は二つのテーマを設けました。
一つは、アント兄弟のワインが持つ純粋なエネルギーに寄り添うペアリングです。

もう一つは、「アルコールは身体に悪い」という常識を、医学的なロジックと食の設計によって捉え直すことです。

その中心に据えたのが、蒸した比内地のボーンブロスをベースにした「楊貴妃スープ」です。

エイジング(加齢)の多くは腸から始まる慢性炎症が原因となります。
アルコールは腸にとって刺激となる側面があるため、アント兄弟の鋭い酸を持つワインに寄り添いつつ、ボーンブロス、雪茸、そして海藻(発菜)を用いて腸内環境を整える設計といたしました。

ほかにもメニューを通して色々な仕掛けがあったのですが、それはまた別の機会にお伝えしようと思います。

ライフスタイルが長寿に与える影響

ゲストの方々からは、ワインを讃える声に加えて、「あれだけの量を飲んだのに、翌朝まったく残っていない」、「脳がクリアで、胃もすっきりしている」といった感想を多くいただきました。

なかには、帰りの電車で「これは総合的に心身に良い“処方”だったのだな」と感じてくださった方もいらっしゃいました。
美味しく食事を楽しみながら、身体が自らの細胞を整えていく。
それこそがピエールの目指す理想であり、今回のコラボを通じて方向性が一気に開けた気がします。

また、ディナーの席で私のストックから2017年のアルノー・アントのムルソーをブラインドで提供した際、ルイ・アント氏が一口含んで「This is my father’s wine」と答えた瞬間がありました。
歴史と血の対話を感じさせる、非常に深い場面でした。

医学的な観点から申し上げますと、遺伝子が長寿に与える影響は約20%程度とされており、残りの80%は後天的なライフスタイルに依存します。
家族や仲間とワインを嗜み、好みの食事を楽しむ時間は、私が考える「健康長寿」に欠かせない要素の一つです。

ワインや食事には長い歴史があります。
身体に悪影響を及ぼすという現代の概念だけでアルコールを食文化から一律に排除するのではなく、健やかに楽しむための方法を今後も追求してまいります。

最後に、素晴らしい機会をくださったルグランさんに心からの感謝を申し上げます。

FAM
東京都港区赤坂2-18-19 赤坂シャレー2 B104

 

〔大友“ピエール” 博之〕

日本のみならずロサンゼルス、フランクフルト、香港、バンコクに拠点を持ち、個別化医療(precision medicine)を実践している。免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、運動療法を取り入れた治療で定評がある。

・ 医師 日本抗加齢医学会専門医 / 欧州抗加齢医学会専門医 / 日本麻酔科学会専門医
・ 西洋薬膳研究家、シェフドクターピエールとしても活躍中
渋谷セントラルクリニック代表
・ 一般財団法人 日本いたみ財団 教育委員
・ 一般社団法人食の拠点推進機構 評価認証委員/食のプロフェッショナル委員

・ 料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有するシェフなどが集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会のオフィシエ
・ ワインにも造詣が深く、フランスの主要産地から名誉ある騎士号を叙任している。
 シャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ / ボルドーワイン騎士団 コマンドリー /ブルゴーニュワイン騎士団 シュヴァリエ  

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