
食と医学の境界、そして「長寿医療」から「老化医学」への変遷
医学と食の境界線について
シンガポールから帰国する前に、ラクサを食べていなかったことを思い出しました。
慌ててラウンジで一杯いただきましたが、シャンパーニュと共に楽しめるのは非常に贅沢なひとときです。
旅先で漢方街を歩くのが最近の楽しみになっています。
漢方を物色していると、今では食材になっているものも多いですが、遠い昔はこれらもすべて「薬」であったことに気づかされます。
医学と食の境界というものは、案外あいまいなものなのかもしれません。

長寿医療から老化医学への変遷
今回の学会で、少し面白い変化に気づきました。
これまで「Longevity(長寿医療)」と呼ばれていたものが、最近は「Geromedicine」という言葉に置き換わり始めているということです。

言葉が変わるときには、背景に何かが起きています。
Longevityという言葉には、もともと少し自由な雰囲気がありました。体を調べて、ホルモンや代謝や炎症を整えていく、いわば「人生のチューニング」のような医療です。
ところが最近は、mTOR、NAD、Senolyticsといった言葉が頻繁に飛び交っています。
しかしよく見ると、それらはすべてツールなのです。
気がつくとスポンサーに製薬会社が増えており、なるほどと感じる部分がありました。
「長く元気に生きる」という話が、いつのまにか「老化を治療する医学」という話に変わり始めているのかもしれません。
そのようなことをぼんやりと考えながら、シンガポールの長い夜を過ごしていました。
私には少し難しすぎるお話ですので、ラクサを食べながら少し離れて眺めているくらいが、ちょうどいいのかもしれません。

〔大友“ピエール” 博之〕
日本のみならずロサンゼルス、フランクフルト、香港、バンコクに拠点を持ち、個別化医療(precision medicine)を実践している。免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、運動療法を取り入れた治療で定評がある。
・ 医師 日本抗加齢医学会専門医 / 欧州抗加齢医学会専門医 / 日本麻酔科学会専門医
・ 西洋薬膳研究家、シェフドクターピエールとしても活躍中
・ 渋谷セントラルクリニック代表
・ 一般財団法人 日本いたみ財団 教育委員
・ 一般社団法人食の拠点推進機構 評価認証委員/食のプロフェッショナル委員
・ 料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有するシェフなどが集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会のオフィシエ
・ ワインにも造詣が深く、フランスの主要産地から名誉ある騎士号を叙任している。
シャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ / ボルドーワイン騎士団 コマンドリー /ブルゴーニュワイン騎士団 シュヴァリエ


