
1937年、歴史を刻むワインとの対話
時を超えるワインの味わい
今日いただくワインが生まれた1937年は、日中戦争が始まった年であり、サンフランシスコにゴールデンゲートブリッジが完成した年でもあります。
また、私(ピエール)の祖母が医学校を卒業した年でもあり、その歴史の重みに思いを馳せます。私にとってワインとは、時を、そして瞬間を飲み、想いを人と分かち合うための特別な存在です。
このような古いワインの味わいがどのようなものか気になる方も多いと思いますので、テイスティングのポイントを少しご紹介します。ワインの基本的な要素は、タンニン(渋み)、果実味、酸味、甘味、アルコール、香りの6つです。
1937年のワインともなると、最近のワインと比べ、渋みやアルコールは非常に穏やかで、果実味はほとんど感じられません。酸味もかなりまろやかです。
甘みが増したわけではないものの、全体的なバランスから、どこかキャラメルのような甘くビターな印象も受けます。このような最初の印象が、グラスの中で刻々と変化していくのは、古酒でしか味わえない特別な体験です。

ワインと健康について
ワインといえば、ポリフェノールが豊富で健康に良いと考えている方も多いでしょう。ワインには何百種類ものポリフェノールが含まれていますが、特に有名なのがアントシアニン、レスベラトロール、そしてタンニンです。
レスベラトロールやタンニンには、寿命を延ばしたり、動脈硬化や認知症を予防したりするなどの効果があると言われています。
特にタンニンは、今回のような長期熟成によって、タンニン同士が結合することで健康効果が増すことが分かっています。お酒を飲まない方には、お茶のカテキンも同じく結合型タンニンなのでおすすめです。
医学界では、男性はグラス2杯、女性はグラス1杯以上のアルコールは飲み過ぎに分類されます。この基準からすると、私は飲み過ぎの部類に入りますが、皆様におかれましても、ご自身の体調をうまくコントロールしながら、人生を楽しんでいただければと思います。

〔大友“ピエール” 博之〕
日本のみならずロサンゼルス、フランクフルト、香港、バンコクに拠点を持ち、個別化医療(precision medicine)を実践している。免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、運動療法を取り入れた治療で定評がある。
・ 医師 日本抗加齢医学会専門医 / 欧州抗加齢医学会専門医 / 日本麻酔科学会専門医
・ 西洋薬膳研究家、シェフドクターピエールとしても活躍中
・ 渋谷セントラルクリニック代表
・ 一般財団法人 日本いたみ財団 教育委員
・ 一般社団法人食の拠点推進機構 評価認証委員/食のプロフェッショナル委員
・ 料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有するシェフなどが集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会のオフィシエ
・ ワインにも造詣が深く、フランスの主要産地から名誉ある騎士号を叙任している。
シャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ / ボルドーワイン騎士団 コマンドリー /ブルゴーニュワイン騎士団 シュヴァリエ


