

温泉とワインがもたらす長寿の秘訣
温泉とワインがくれた癒しの記憶と命の回復力
温泉ワインを知ったのは研修医の時でした。
現在の研修医も大変ですが、当時の研修医生活は、まるで超過酷な企業のようなものでした。
働き詰めの日々の中、月に一度の休日を心待ちにし、温泉へ車を走らせたことを今でもよく思い出します。
温泉といえば癒し、癒しといえばワインです。
中世フランスの修道院では、巡礼者たちにワインが無料で振る舞われていたといいます。
様々な悩みや葛藤の中で祈りを捧げ、神に助けを求める人々にとって、ワインは大きな心身の癒しであり、道を示してくれるものであったに違いありません。
赤ワインと温泉の力でインスピレーション
現代を生きる私が温泉のお供にどのワインを選ぶかは悩ましいところです。
元気が湧き出るようなシャンパーニュも魅力的ですが、「ワインは私の血、パンは私の肉」というキリストの言葉を思い出し、修道士たちに倣って赤ワインを選ぶことが多いです。
そのため、ブルゴーニュで最も古くからぶどう畑があったというジュヴレ・シャンベルタン村のワインをよく選びます。
ジュヴレ・シャンベルタン村では赤ワインのみが生産されており、男性的な力強さと鉄分を思わせるタンニンは“ブルゴーニュの王”と呼ばれるにふさわしい風格です。
写真は岐阜にある養老の滝近くの温泉です。
この最強の組み合わせなら、癒しと滋養強壮で本当に寿命まで延びてしまうかもしれません。
赤ワインに多く含まれるポリフェノールについてはよく知られていますが、ぶどうの果皮や種に多く含まれるレスベラトロールは脳に刺激を与えるため、アルツハイマー予防にも良いとされています。
研修医時代から少し成長した今の私にとって、温泉ワインはリラックスのためだけでなく、新たなインスピレーションを得るためのものへと変わりつつあります。
心を揺さぶるような素晴らしい赤ワインを飲むと、良いアイデアが浮かぶのは不思議なものです。
早く温泉に行きたいものです。
〔大友“ピエール” 博之〕
日本のみならずロサンゼルス、フランクフルト、香港、バンコクに拠点を持ち、個別化医療(precision medicine)を実践している。免疫栄養学に基づいた食事指導、ホルモン補充療法、運動療法を取り入れた治療で定評がある。
・ 医師 日本抗加齢医学会専門医 / 欧州抗加齢医学会専門医 / 日本麻酔科学会専門医
・ 西洋薬膳研究家、シェフドクターピエールとしても活躍中
・ 渋谷セントラルクリニック代表
・ 一般財団法人 日本いたみ財団 教育委員
・ 一般社団法人食の拠点推進機構 評価認証委員/食のプロフェッショナル委員
・ 料理芸術や食の楽しみといった価値感を共有するシェフなどが集う日本ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会のオフィシエ
・ ワインにも造詣が深く、フランスの主要産地から名誉ある騎士号を叙任している。
シャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ / ボルドーワイン騎士団 コマンドリー /ブルゴーニュワイン騎士団 シュヴァリエ