ナイアシン ないあしん
ナイアシンとは
栄養素で分類すると、ビタミンBのひとつでもあるナイアシンは、ビタミンB3ともいい、水溶性ビタミンです。ナイアシンを構成しているのは食品のニコチンアミドと植物性食品のニコチン酸です。ここでいうニコチン酸とは、たばこに含まれているニコチンとは別の物質です。その区別を明確にするために通常はナイアシンという総称で表示されています。
ナイアシンの成分は、アミノ酸や炭水化物、脂肪の代謝をおこなうために働きかける酵素NAD、NADPによって構成されています。ナイアシンは、人の体内で生成することができますが、必要な所要量には満たないため食品から摂取して補う必要があります。ナイアシンはエネルギーをつくるほかにも、女性ホルモンとして知られるエストロゲン、男性ホルモンのテストステロン、コルチゾン、インスリン、などのホルモン生成に重要な役割を果たしている成分でもあるのです。
ナイアシン発見の歴史
ナイアシンの発見は、ナイアシンが不足することによって起こる病気をきっかけにして見つけられました。ナイアシンが不足して起こる病気として、以前はペラグラという病気が代表的でした。ペラグラは皮膚の炎症や口内炎、下痢などが起こり、神経にもダメージを与えるため重症化すると脳症から死に至ることもある病気でした。とうもろこしを主食とする民族に見られることが多く、とうもろこしにはトリプトファンが少ないためにナイアシンに転換する量が不足して起こると考えられました。現代では食品の流通が改善されるようになったことなどから日本ではほとんどみられることはありませんが、世界にはまだペラグラにかかりやすい地域もあります。
ナイアシンのはたらき
人の体内では栄養素を取り込んでさまざまな酵素を生成することも行われています。ナイアシンにはこうした酵素を補う役割もあるのです。酵素は約2000種類あることが現在わかっていますが、そのうちナイアシンがNAD+,NADH, NADP+,NADPHとしてサポートする酵素は約500種類あると言われています。ナイアシンは体内でナンバーワンの広い守備範囲を持つ体内ではいわばトップアスリート並みの優秀な栄養素であることがわかります。
細菌の健康管理といえばよく話題になる、糖質や脂肪酸、そしてアミノ酸からATP(アデノシン三リン酸)が作られて電子がNAD+に移りATP産生の初発反応を起こします。また、NADPHを利用してグルコースから脂肪酸が生成されます。そしてNADH,NADPHは酸化した化合物を還元するために利用されています。
食事からナイアシンをとるために
人がナイアシンを生合成する転換率は60分の1程度になりそのことからナイアシン当たりの転換率を表すナイアシン当量(NE)という表し方をしています。
ニコチン酸やニコチンアミドなら1mg、トリプトファンなら60mg、ということになります。
ナイアシンが含まれている食品のうち、多いのはマイタケ、たらこ、インスタントコーヒー、かつお節、メジマグロ、カツオ、落花生などが代表的な食品です。
ナイアシンのとりすぎで起こる症状
ナイアシン、ニコチン酸を極端にとりすぎると、血清コレステロールの低下が起こります。海外で、心筋梗塞のような高コレステロールが原因となる病気を予防するためだけでなく、治療にもナイアシンが使用されており、副作用の一つとしてフラッシングという症状があります。フラッシングとは,100~200 mg以上のニコチン酸を一回で投与した場合に体にかゆみやほてりを感じることがあります。しかしこの症状は2~3時間でおさまります。
ニコチンアミドの大量投与の場合は、ある種の糖尿病の予防や治療にも効果があるとされます。またアポトーシス阻害作用の報告があります。
ニコチン酸やニコチンアミドは,補酵素作用として等価です。薬理作用においての作用はまったく異なっています。