食事誘発性熱産生(DIT) しょくじゆうはつせいねつさんせい
食事誘発性熱産生(DIT, diet-induced thermogenesis)とは、食べ物を食べることによってエネルギー代謝が促進されることをいいます。「特異動的作用(SDA, specific dynamic action)とも呼ばれ、これによって得られた熱は、寒さを感じた場合などには体温を維持するために利用されますが、周囲の環境の温度が適当である場合には、熱は体外へと放散されます。食事を消化吸収している間は、安静時よりも30%ほど増加します。
食事誘発性熱産生による代謝量は、食べ物の中に含まれている糖質、脂質、タンパク質のエネルギー比率によって異なり、たんぱく質だけを摂取した場合にはエネルギー摂取量の約 30%、糖質のみでは約6%、脂質のみでは約4%と言われています。したがって食事はこれらの栄養素の混合なので、1回の食事による食事誘発性熱産生は平均すると摂取したエネルギーの約10%程度となっています。
高タンパク質の食事を摂ると、糖質や脂質の多い食事を摂る時に比べて、食事誘発性熱産生によるエネルギーの消費が大きくなります。減量を試みる時には高タンパク質かつ糖質・脂質の控えめな食事をするように言われるのは、このためです。加齢や運動不足によって筋肉が衰えると、基礎代謝だけでなく、食事誘発性熱産生も低下します。反対に定期的なトレーニングを行うことで筋肉を増やせば、食事誘発性熱産生は大きくなるとされています。また、よく噛まずに飲み込んだり、流動食だけの食事を摂る場合と比べると、よく噛んで食べる場合の方が食事誘発性熱産生は高くなるといわれています。
食事の時刻によっても食事誘発性熱産生の量は変化すると考えられています。日本栄養・食量学会誌に掲載された論文によると、7:00・13:00、19:00に食事をする朝型と、13:00・19:00・1:00に食事をする夜型の2種類の被験者グループをつくって実験した場合、DITが最も高かったのは7:00の食事で、最も低かったのは1:00の食事だったという結果が出ています。また、夜型の食事は1日のエネルギー消費量を全体的に減少させ、肥満の原因の1つにもなると考えられています。