軟食 なんしょく
定義
軟食とは食事形態の一種で、軟らかい食事と書く通り、軟らかく食べやすい食事です。
おかずは食材の切り方や調理方法を工夫して軟らかくし大きさは一口大以下が一般的です。
見た目は常食に近く、食材を特定することができます。
各食品の状態は下記の通りです。
お 米:水を多めにして炊いたご飯(軟飯)や、米粒があるお粥(三分粥、五分粥、七分粥、全粥)
麺 類:良く茹で芯がない、一口大以下にカット
パ ン:フレンチトーストのように牛乳等につけ軟らかく調理
おかず:一口大以下、野菜は良く火を通し繊維が噛み切りやすくなっている、舌でつぶせる硬さ、歯ぐきで噛める硬さ例えば硬い煎餅は常食になりますが、軟らかいぬれ煎餅は軟食となります。
軟食の位置付け
常食と流動食の中間として位置し、術前・術後、身体の諸機能の低下により、消化吸収が不十分状態にある場合、体力回復時のリハビリ食として提供される場合、離乳食から常食への移行期間に提供される場合、高齢者の咀嚼機能低下時や認知機能低下による食器使用が難しい場合の補助になる場合など様々な場面で提供されます。
特に高齢者に対する軟食の提供は高齢者自身のQOL(Quality of life/生活の質)の向上へ大きく関わってきます。
高齢になり咀嚼機能が低下し、利き手がうまく使えずお箸か持ちにくい患者の食事をいきなり全ての食材をこまかく刻んだおかずや流動食へ変更してしまうと、喉につまってしまうリスクは減るかもしれませんが、見た目が普通の食事に比べ見劣りしてしまうため、食欲低下や認知機能低下促進につながります。
食材が目で見てわかる食事と見てわからない食事では食事を食べる側の満足度が大きく違います。
常食にもうひと手間加える必要のある軟食は調理するものには大変かもしれませんが、QOLや体調を維持する上でとても重要な食事形体といえます。
また、嚥下機能等低下に伴う流動食の開始後の軟食、常食への変更はとても難しくなります。
体調の変化で軟食にした場合、適切なアセスメント評価を行い病態が快調に向かっている場合は適切なタイミングで常食に変更することも重要となります。
軟食の対象者
消化吸収が不十分状態にある方、咀嚼機能がやや低い方(高齢者、幼児等、術後患者等)が対象となります。
また、認知機能や軽度麻痺などによるお箸での細かい作業が難しい方や、大きな手術を受けた後のリハビリ中の患者も対象となります。
一般家庭における風邪をひいた際に弱った胃を保護するために食べるような煮込んだうどんやお粥も軟食といえます。
軟食の注意点
軟食は咀嚼機能が低下もしくは低い患者や乳幼児向けの食事であり、嚥下機能が低下している場合はさらに細かく刻み、とろみをつける等の食塊形成を補助できるような食事形態にする必要があります。
また、軟食に向かない食材もあります。
生野菜:きゅうりやキャベツの千切りやレタスや皮付きトマトなどは一度茹で、温野菜にすると軟らかくなります。
食物繊維の多い野菜:ごぼう、たけのこ、セロリ、ほうれん草や青梗菜等青菜の茎の部分には食物繊維が多く食べづらいため、軟らかい部分のみを使用するか、繊維をたつように切りよく火を通すと軟らかくなります。
肉類:厚みや筋がある肉は薄くし、筋を切り麹や味噌につけるなどして軟らかくします。
果物:生の果物は硬く食べづらいので、缶詰を使用するか、水と砂糖で煮てコンポートにすると軟らかくなります。柑橘類の酸味は胃、腸壁の刺激をするため摂取は控か缶詰を使用します。
香辛料:刺激の強い香辛料胃、腸壁の刺激をするため摂取は控えることをおすすめします。
軟食の注意点として、三分粥、五分粥は水分が多くエネルギー量が低いため、長期で摂取する場合は栄養不足にならないように注意し、栄養補助食品の使用や、三食の他に高エネルギー量のおやつの提供をするなどの必要があります。(100gあたり全粥71Kcal、五分粥36Kcal、三分粥20kcal)
常食に比べ軟食には水分が多く含まれているため腎不全や心不全で水分制限がある方は特に注意が必要となります。
食べる人の食事摂取機能を十分に理解し、食事の楽しみを感じ、食事を通して生活リズムを整え、しっかりとしたエネルギー量を確保することができる軟食は食事形態のなかでとても重要なもといえます。
離乳食としての軟食は上記に述べた内容のほかに使用してはいけない食品が多くあるため、万が一の自己やアレルギー疾患の発症を防ぐためにも、子どもの状態を見極め、医師や保健所などの適切な指導を受けることが重要です。
高齢者向け、乳幼児向けどちらの軟食も数多くのメーカーからレトルト食品や瓶、宅配食が市販されています。これらも使用し、手作りではまかないきれない栄養素等を補給するのも便利で効率的です。