臓器における摂食調節 まっしょうのせっしょくちょうせつ
脳の中枢神経による摂食調節には、血中のグルコースや遊離脂肪酸の濃度が関与していますが、その他にも消化管への物理的な刺激や消化管などからのホルモンの分泌などのような末梢での摂食調節の仕組みも重要な役割をはたしています。
例えば、空腹時は胃が縮んでいますが、食事をして食べ物が胃の中に入ると胃壁が伸展します。また、胃や小腸などに食べ物が流れ込んでくる際にも胃壁や腸壁は刺激を受けます。このような物理的な刺激も迷走神経を興奮さて満腹中枢を刺激するシグナルになります。
近年、空腹時や満腹時に消化管などから分泌されるさまざまなホルモンも中枢神経に作用して摂食を調節していることが明らかとなってきています。例えば、食事をすると血糖値が上昇してインスリンが分泌されます。インスリンの働きにより脂肪細胞からレプチンが分泌されて、血流を介して脳へと運ばれます。レプチンは146個のアミノ酸からなるペプチドホルモンであり、脳の視床下部にあるレプチンの受容体に結合して満腹中枢に作用します。それにより、満腹感を感じると同時に交感神経系にも作用してエネルギーの消費を促す働きがあります。また、そのほかに下部腸管や直腸の粘膜細胞に存在するペプチドYYや十二指腸や小腸上部(空腸)から分泌されるコレシストキニンなども満腹感のシグナルとして摂食中枢に作用して食欲を抑えることが明らかになっています。
反対に、空腹時に分泌量が増加して食欲を高めるホルモンもあります。胃や十二指腸が分泌するグレリンは28個のアミノ酸からなるペプチドホルモンです。グレリンは空腹時に分泌されて求心性迷走神経を介して脳の摂食中枢を刺激し、食欲を増進させます。また、成長ホルモンの分泌を促す働きもあります。
このように、脳の視床下部で食欲を調節するためには、消化管などで分泌されるホルモンや胃や腸などからの物理的な刺激といった末梢からの情報が非常に重要であることが明らかにされています。