臓器別のエネルギー代謝  ぞうきべつのえねるぎーたいしゃ

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身体活動を除いた全身の消費エネルギーは基礎代謝量と言われ、これは、各臓器、筋肉(骨格筋)、また脂肪組織においてのエネルギー消費量の総和です。各消費エネルギーの大きさは、全臓器>骨格筋>脂肪組織という大小関係になっています。安静時で考えると、各臓器、骨格筋、脂肪組織の消費エネルギー量は次のようになります。

体重70kgの成人の場合 
・肝臓  :360kcal/日
・脳   :340kcal/日
・心臓  :145kcal/日
・腎臓  :137kcal/日

臓器の消費エネルギー計:982kcal/日
・骨格筋 :370kcal/日
・脂肪組織:70kcal/日
・その他 :277kcal/日

この数値を見てみると、肝臓と脳における消費量が非常に多いことが分かります。肝臓は、全身の様々な代謝反応を引き受ける臓器であり、私たち人間の臓器の中でも大きな臓器で、消化管や腎臓などと接しており、代謝の中枢部分です。

肝臓の役割としては主に3つあります。まず1つ目は、過剰に摂取した栄養素をグリコーゲンという物質の形で貯蔵して、飢餓状態になった時にはそれを分解して、エネルギーを作り出すことです。これによって、私たちは生体を維持することができます。2つ目は、体に有害な物質を解毒して、無毒な状態にしてから、体外に排泄することです。体に有害な物質は体外から入ってくるものだけでなく、体内で老廃物として産生されるものもあります。肝臓は、それらを無毒な状態にして、安全に体外へ排泄する役割を担っています。3つ目は、体内で起こる反応を起こすために必要なタンパク質を合成することです。例えば、怪我をした時などに出血を止めるような物質を合成するのは、肝臓です。このように様々な役割を担うために、肝臓はたくさんのエネルギーを必要としているということが分かります。

ここで挙げた数値は、体重70kgの成人を想定して算出されたものですが、臓器によるエネルギーの消費量は、成人後は大きく変動することはありません。歳を重ねていくと、筋肉の量は減少することが一般的ですが、臓器の大きさが変動することはないため、何かしらの疾患などを抱えていて臓器不全などがない限り、消費エネルギー量に大きな変化は見られません。また、脂肪の量は加齢に伴って蓄積量が増加していきますが、脂肪組織によるエネルギー消費は元々小さいため、脂肪の量が増加しても、エネルギー消費量が大幅に増加する可能性は低いでしょう。どのような体の組織も加齢によって、重さ当たりの代謝量は低下していくことが想定されますが、臓器については、加齢による影響がない、または非常に小さいと考えられています。