脂質の代謝調節と疾患との関わり  ししつのたいしゃちょうせつとしっかんとのかかわり

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私たちヒトを含めた多くの哺乳類は、何十万年の間に少しずつ進化してきましたが、その進化の中で、飢えに耐える体の仕組みが作られていきました。脂肪つまり脂質は、糖やタンパク質といった他の栄養素よりも効率の良いエネルギー源です。そのため私たちの体は、余分なエネルギーを摂取した時に脂肪という形で貯蔵することで、食べ物に困った時にはそれを利用して生き延びられるような仕組みになっています。これは、長い進化の過程の中で獲得した、子孫を残すためのテクニックなのです。

このような経緯から、ヒトの体は糖→タンパク質→脂質の順にエネルギーとして利用するような仕組みになっています。脂質が利用されるのは主に、空腹時や運動中といった、エネルギー不足の場合です。また、脂質がエネルギーとして消費されるには大量の酸素を必要としますので、体脂肪を減らしたい場合には、瞬発的な運動つまり無酸素運動よりも、持久走のような有酸素運動が効果的だと言われています。

現代は飽食の時代です。エネルギーの過剰摂取と運動不足が叫ばれるこの時代には、進化の過程で獲得した生存システムも、肥満などの生活習慣病を引き起こす原因となっています。
脂質の多い食事を摂ると、血液中の中性脂肪やコレステロールの濃度が増加していきます。過剰になった脂質は、体のあらゆる組織に蓄積されていきます。
血管などの組織に脂質が異常に蓄積すると、血管の壁が硬くなり動脈硬化が進行していきます。これによって血流が悪化すると、全身へ十分な酸素や栄養分の供給を行うことができなくなり、心筋梗塞や脳梗塞といった深刻な疾患を引き起こすことにつながります。例えば、心臓の血管が梗塞(硬くなったり詰まったりする状態)すると、心筋梗塞になってしまいますし、脳の血管が詰まれば脳梗塞を引き起こすことになります。

血液中の中性脂肪やコレステロールの濃度が増加している状態は、「脂質代謝異常症」と呼ばれます。この原因としては、高カロリーな食生活やアルコールの摂取過多、喫煙習慣といった生活習慣の乱れ、運動不足などが挙げられますが、遺伝的な要因のこともあります。
脂質代謝異常症は、基本的に自覚症状がないため、健康診断などの際に行う血液検査で判明することがほとんどです。また、進行することで、上に挙げたような心筋梗塞や脳梗塞といった合併症を発症することになります。合併症が発現する前に気づき、適切な対処・治療を行うことが重要です。

脂質代謝異常症の治療には、主に3つの方法があります。食事療法・運動療法・薬物療法です。まずは食事と運動の改善から取り組み、さらに治療が必要な場合に薬物療法を行います。
食事療法では、まず摂取カロリーを抑え、脂質の少ない食事を摂ることを意識します。また、ビタミンやミネラルといった栄養素を特に意識的に摂取することが大切になります。特に、糖やタンパク質を脂肪に変えて蓄積させないためには、ビタミンB群を意識すると良いでしょう。ビタミンBは、摂取した栄養素を蓄積させずに代謝するように補助する役割があります。ビタミンBが多く含まれる食材としては、レバーや秋刀魚・サバ・いわしといった青魚、アーモンド、ピーナッツなどが挙げられます。

脂質は、私たちにとって必要不可欠な栄養素の一つですが、摂取の仕方を間違えると深刻な疾患を引き起こす要素でもあります。疾患を未然に防ぐためには、日頃の食事を改めて見直して、過剰なエネルギー摂取を控えるように心がけることが大切になるでしょう。また、忙しい現代人にとって適度な運動習慣をつけることはなかなか難しくもありますが、いつもバスに乗るところを徒歩にしてみる、など少しの習慣の見直しで生活に運動を取り入れることができます。いま一度、生活習慣を振り返り、できる部分から改善してみましょう。

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