遺伝子の発現と栄養 いでんしのはつげんとえいよう

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「遺伝子の発現」とは、遺伝子の持っている情報が細胞の構造や機能に変換され、実際に形となって機能するようになることです。通常は遺伝子の情報に基づいて、たんぱく質が合成されることを言います。

遺伝子発現は転写の開始段階を調節する2つのパターンがあります。1つは構成的発現で、生存に必要な代謝にかかわる酵素などを合成し、発現することをいい、この場合は遺伝子の転写が常に行われています。2つめは調整的発現で、発生段階に応じて働く・働かないが、切り替わるような発現です。調整遺伝子によって生成される調節たんぱく質が、他の遺伝子の転写を調整するなどして、この切り替わりを制御しています。これらの遺伝子の働きは、ヒトが生命活動を維持するうえで不可欠なものです。

かつて遺伝子情報や発現は受精時に決定し、外部の影響は受けないと考えられていましたが近年、その遺伝子の発現が、摂取する栄養や外聞環境によって作動したり、しなかったりすることがわかりました。遺伝子の発現が、栄養や外部環境によって影響を受け、どのような変化が起こるかという研究を、後成的遺伝学「エピジェネティックス」と呼びます。

つまり、肥満や遺伝的といわれる病気(高血圧、心臓病など)の遺伝子が実際に働いて、体に悪影響を与えるかどうかは、日々摂取する食事に左右されるところが大きいということです。健康的な食習慣であれば、マイナスの影響を与える遺伝子をたとえ持っていたとしても、そのスイッチはoffのままで作動しませんが、栄養が偏ったり、極端に摂取カロリーが多かったり少なかったりすると、体に悪影響のある遺伝子がonとなって作動してしまい、病気・肥満につながるのです。

またこうしたマイナス遺伝子のリスク(作動しやすい)は、少なくとも次世代(自分の子供)にも受け継がれてしまうことがわかっています。さらに親が子供と一緒に暮らし始めても、以前と同じような不健康な食生活を続けていれば、ますますマイナス遺伝子の発現の確率が上がってしまいます。日本で昔から「肥満(心臓病・高血圧)の家系」などと言われてきたのは、栄養科学的に見ても正しかったのです。

このように健康維持に大きな影響を与える食の観点から遺伝子レベルで健康を考え、実践する「遺伝子栄養学」は、予防医学の中核をなすものとして、近年注目が集まっています。

参考文献

 

 

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