タンパク質コントロール食 たんぱくしつこんとろーるしょく

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たんぱく質調整食とは

たんぱく質調整食とは、たんぱく質の摂取量を調節する食事のことをいいます。たんぱく質調節食は、1日のたんぱく質の給与量が0〜60gの低たんぱく質食と、たんぱく質の給与量が80g以上の高たんぱく質食の2種類に大きく分けられます。低たんぱく質食は、たんぱく質量を制限する代わりに、糖質と脂質からエネルギー量を十分確保することを基本としています。摂取エネルギー量が不足してしまうと、筋肉などの体たんぱく質が分解され、そのたんぱく質を構成しているアミノ酸から体に必要なエネルギーが産生される(糖新生)ため、体内でアミノ酸が分解される際に生じる窒素化合物の生成が増大するなど、適応疾患の治療に影響が出てしまい、たんぱく質量を制限する効果が低下してしまうため注意が必要です。高たんぱく質食は、高エネルギー、高ビタミン、高ミネラル食とし体内でたんぱく質が効率よく利用されるよう促します。

適応疾患

1)慢性肝炎
肝炎は、ウイルス感染、アルコール、薬物および自己免疫などが発症の原因となり、病態が6か月以上持続したものを慢性肝炎と呼びます。慢性肝炎は、主にB型およびC型ウイルスによるものと考えられています。慢性肝炎の急性憎悪期では、食欲不振や消化不良などの症状が現れるため、脂質を制限し形態も軟食とします。たんぱく質は40〜50g/日程度の低たんぱく食を摂取し、症状が軽くなれば肝臓の再生能力が高まるように、たんぱく質の摂取量を増やします。回復期では、肝細胞の修復のために70〜90g程度の高たんぱく質食とし、高エネルギー、高ビタミン食とします。

2)肝硬変(代償期)
肝硬変は、肝臓の基本構造である肝小葉の構造が崩れ、肝臓内の血行の状態にも大きな障害が出ます。全身倦怠感や食欲不振、上腹部不快感のほか、食道静脈瘤、低アルブミン血症に基づく浮腫、腹水、また肝性脳症などが症状としてあげられます。栄養管理としては、代償期においてはエネルギー量と脂質量を慢性肝炎に準ずる量とし、たんぱく質量については70〜80g/日程度(体重1kgあたり1.2〜1.3g/日)の高たんぱく質食とします。栄養代謝障害がみられる際は、たんぱく質量を体重1kgあたり1.5g/日に増やします。その他、食塩の過剰摂取には注意が必要です。

3)肝硬変(非代償期)・肝不全
肝硬変(非代償期)は代償期からさらに肝機能障害が進んだ状態です。肝不全は、急性肝不全と慢性肝不全に分けられ、前者は劇症肝炎、後者は肝硬変や肝細胞がんの症例で現れます。高度の肝機能障害によって、肝性脳症、黄疸、血液凝固異常、腎障害などが起こり、肝硬変(非代償期)から更に重篤な症状といえます。栄養管理は基本的には肝硬変に準じますが、肝性脳症の発症には食事からのたんぱく質摂取による腸内でのアンモニア産生や、肝臓でのアンモニア解毒能力の低下などが関係していると考えられるため、高アンモニア血症の予防や治療としてたんぱく質量を30〜50g/日程度(体重1kgあたり0.5〜0.8g/日)の低たんぱく質食の摂取とします。その他、腹水や浮腫の予防と治療のために食塩量を制限し、フィッシャー比の低下を防ぐために分岐鎖アミノ酸(BCAA)豊富に含む食品や、経腸栄養剤を使用します。

4)急性糸球体腎炎
急性糸球体腎炎は小児や学童期によく発病しますが、成人や高齢者でも発病します。咽頭炎や扁桃腺炎、気管支炎などに罹患しその症状が治まってきた頃に発症することが多いです。腎臓の糸球体の広範囲に炎症が生じるため糸球体のろ過量が減少し、重症では無尿になることもあります。腎臓の負担を軽減するため、たんぱく質量を30〜40g/日程度(体重1kgあたり0.5g/日)に制限した低たんぱく質食を摂取し、浮腫や高血圧、乏尿に対しては食塩や水分摂取量を制限します。

5)急性腎不全
急性腎不全とは、短期間のうちに腎機能が低下、廃絶し、体内からの老廃物の排泄や体液のバランスが維持できなくなった状態をいいます。糸球体のろ過量が極端に減少し、尿量も顕著に減少します。尿排泄の状態から、「乏尿期」「利尿期」「回復期」の3つの病期に分けられ、治療としての食事療法も厳格に行われます。エネルギー不足は体たんぱく質の分解を引き起こすため、エネルギー量を糖質と脂質から確保することに留意し、尿毒症を予防するためにたんぱく質を必要最小限まで制限します。目安として体重1kg/日あたり、乏尿期では0.2g、利尿期では0.5g、回復期では1.0gの低たんぱく質食とします。併せて食塩摂取量も厳しく制限します。

6)慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病は、高血圧、糖尿病、痛風などの生活習慣病や、慢性糸球体腎炎、多発性囊胞腎など多くの原因から、慢性的に腎機能が低下する腎臓病の総称です。慢性腎臓病は、eGFR値という腎機能を表す数値によって5つのステージに分けられます。ステージが上がれば上がるほど腎機能が低下していき、末期腎不全に至ると血液透析が導入されます。ステージ3以上になるとたんぱく質摂取量を40〜50g/日程度、体重1kgあたり0.6〜0.8g/日に制限された低たんぱく質食を摂取し、透析期になると逆にたんぱく質摂取量を60〜80g/日程度、体重1kgあたり1.0〜1.3g/日に増量する高たんぱく質食を摂取する必要があります。

7)ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群は独立した病気をさすものではなく、浮腫を伴い高たんぱく尿を原因とする低たんぱく血症、脂質異常症症が認められる状態をいいます。腎機能が正常な場合はたんぱく質の制限はしませんが、腎機能の低下がみられる際はたんぱく質摂取量を40〜50g/日程度、体重1kgあたり0.6〜0.8g/日に制限された低たんぱく質食を摂取します。

8)栄養失調症・やせ・貧血
全身の栄養状態を回復させるため、たんぱく質摂取量を60〜120g/日程度、体重1kgあたり1.0〜2.0g/日に増量し、高たんぱく質食を摂取します。また、たんぱく質の利用効率を上げるために、高エネルギー、高ビタミン、高ミネラル食としますが、大量の栄養を急速に与えずゆっくりと増量していくことが重要です。

参考文献

  • 栄養科学シリーズ NEXT 臨床栄養学 第2版   武田英二・中坊幸弘・竹谷豊 編    講談社
  • 栄養ケア・マネジメント論 経済学からみた栄養管理    福井富穂 編著   化学同人

 

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