末梢静脈栄養 まっしょうじょうみゃくえいよう

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末梢静脈栄養とは

さまざまな疾患により食事が摂れない状態で、そのことが致命的となる患者さんに対し、静脈から輸液の形で栄養素を補給する栄養方法を「経静脈栄養法」といいます。経静脈栄養法には、輸液を投与する部位によって「末梢静脈栄養(peripheral parenteral nutrition:PPN)」と「完全(中心)静脈栄養(total parenteral nutrition:TPN)」の二つに分類されます。末梢静脈栄養(PPN)は、上腕や下肢の末梢静脈からブドウ糖液を中心として、アミノ酸、脂肪乳剤、電解質を配合した輸液剤を補給する方法のことをいいます。末梢静脈栄養は末梢の静脈からの投与になるため、輸液剤の濃度が高くなると血栓性静脈炎を引き起こします。1日に1200kcal程度が投与できる限界の栄養量といわれており、投与栄養量に限りがあるため補助的に用いられることが多く、極端な栄養不良状態や疾病・術後などの影響でエネルギーや他の栄養素の要求が高い状態には不十分といえます。一般的な投与期間は、2週間までの短期間とされています。糖質やたんぱく質と比べて、1g当たりのエネルギー量が多い脂肪が含まれている脂肪乳剤を併用することで、静脈炎を予防し末梢静脈からも高カロリー輸液の投与が可能になります。また、投与の際にはできるだけ太い静脈を選択したり、刺激の少ないシリコンやポリウレタンのカテーテルを留置し、使用する静脈を変更することにより静脈炎を予防することも大切です。

末梢静脈栄養法の適応疾患

米国静脈経腸栄養学会(ASPEN)のガイドラインでは、末梢静脈栄養法が適応される症例は体内の栄養成分を維持するために「食べることができない」「食べてはいけない」また「食べる意思のない」患者。末梢静脈栄養(PPN)は経口摂取が不可能か、外部からの栄養素を吸収できない患者、あるいは完全(中心)静脈栄養が不可能な患者に、2週間までの期間に栄養補給する必要がある場合。とされています。末梢静脈栄養の適応には基本的に疾患や病態からみた、①十分効果が期待できる病態、②比較的治療効果が期待できる病態の二つに分類できます。以下に各々に該当する疾患と病態を示します。

十分効果が期待できる病態
a.短腸症候群、炎症性腸疾患(急性期)、小腸潰瘍、重症下痢、タンパク漏出性胃腸症などにより、腸管の消化吸収機能がない場合。
b.敗血症、多臓器不全、ショック、炎症性腸疾患(急性期)、重度熱傷、急性肝不全などにより、高度の消化管機能不全や麻痺がある場合。
c.急性膵炎(重度)の場合
d.消化管出血、消化管外瘻(急性期)、炎症性腸疾患(急性期)などにより、腸管の絶対安静を必要とする場合。
e.大腸全摘、胃全摘、食道癌手術、膵頭十二指腸切除などの、高度の手術侵襲を受けた場合。
f.イレウス(腸閉塞)、大腸癌、腹膜炎などで、腸管が完全に閉塞した状態の場合。
g.癌化学療法と放射線療法を併用している場合

比較的効果が期待できる病態
a.胃切除(一部)、大腸切除(一部)、肝切除(一部)、中等度熱傷、中等度外傷、急性膵炎(中等度)などにより、中等度の手術侵襲を受けた場合。
b.消化管外瘻の場合
c.炎症性腸疾患の場合
d.集中治療を必要とする栄養不良の場合
e.1週間以上、経腸栄養が使用できない場合
f.副作用の強い、癌化学療法を受けている場合
g.癌や炎症による腸閉塞の場合

末梢静脈栄養の禁忌疾患

脳出血、脳梗塞後遺症、認知症、植物状態、各種神経疾患、頭頸部癌など、明らかに腸管の使用が可能である場合。

7~10日以内に消化管の使用が可能な低い侵襲度の手術後において、腸管の使用が可能になった場合。

高カロリー輸液の危険性が、その効果を上回る場合。

癌の終末期など、治療効果がほとんど期待できない場合。

輸液製剤の種類

高カロリー基本液(高張糖電解質液)
高カロリー基本液は、糖質と電解質を組み合わせた混合溶液であり、各製剤で組成が大きく異なっています。通常、糖質はグルコースが主体となっていて、投与時の糖濃度は全水分量の20%以内に調整するようになっています。電解質については、投与必要な主要電解質としてナトリウム(Na)、カリウム(K)、塩素(Cl)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、リン(P)が含まれています。

アミノ酸製剤
アミノ酸製剤は、タンパク栄養状態の改善に必須とされている栄養剤です。通常は高カロリー基本液内に混注し、投与時には12%以下とする場合が多いです。肝不全用、腎不全用、術後侵襲用など、特定病態用のアミノ酸製剤も多く出回っています。

脂肪乳剤
脂肪乳剤は、必須脂肪酸欠乏症の予防と非タンパク熱量源の供給を目的として投与されます。一般的に大豆油を原材料としていることが多く、50%程度のリノール酸、10~20%の必須脂肪酸が含まれ、総量は50~500ml、エネルギーは100~550kcalとなっています。

ビタミン製剤
ビタミン欠乏によって生じる症状や疾病にはさまざまなものがありますが、特に体液喪失時、低栄養、感染症などでは、一般的にビタミン必要量が増加するため投与されます。また、静脈栄養時におけるビタミン欠乏で注意が必要であるのがビタミンB1欠乏で、代謝性アシドーシス、ウェルニッケ脳症(意識障害・運動失調など)が現れ、死に至ることもあるため十分に注意をします。

微量元素製剤
微量元素は、ビタミンと同じくごく少量で生体内の代謝に大きな役割をもっています。しかし、欠乏症が現れにくいため長期間にわたるTPN投与において、多くの欠乏症が出現しています。主なものとしては、銅、亜鉛、マンガン、セレン、クロムなどがありますが、特に亜鉛欠乏症の多いことが知られているため、最近は亜鉛が含有されているものがほとんどです。

末梢静脈栄養時の合併症

 末梢静脈栄養は、完全静脈栄養に比べて重篤な合併症が起こることは少ないといわれていますが、輸液の濃度が低めであることから輸液量が過剰になる可能性があり、心臓への負担から疲労や息切れ(呼吸困難)などの心不全徴候がみられることもあるため注意が必要です。その他、一般には完全静脈栄養の合併症とされているカテーテル関連血流感染(CRBSI)ですが、PPN製剤の無菌管理を徹底して行わないと輸液中で細菌が増殖し、CRBSIが発生する可能性があるため、管理には十分な注意が必要です。

 

参考文献

  • 臨床栄養学 アセスメント編    上田隆史・河村剛史・佐藤祐造 編  培風館
  • 今日の病態栄養療法(改定第2版)    渡辺明治・福井富穂 編 南江堂

 

 

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